タイ銀行(中央銀行、BOT)のウィタイ・ラタナーコーン総裁が5月18日、金融機関政策委員会(กนส.、Financial Institution Policy Committee)で住宅ローンLTV(Loan to Value、担保比率)規制緩和の1年延長を決定したと発表した。新期限は2570年6月30日(2027年6月30日)まで。具体的には、(a)担保額1,000万バーツ未満の住宅で2件目以降の契約、または(b)担保額1,000万バーツ以上の住宅で1件目から、いずれも100%の融資(頭金なし)が可能。経済減速・中東情勢悪化による不動産需要弱含みに対応する緊急措置で、在タイ日本人駐在員家庭・タイ富裕層の住宅取得を支援する。
LTV規制緩和とは
LTV(Loan to Value)は、住宅ローンの担保価値に対する融資率を制限する規制。
例えば、(a)LTV 80%なら、5,000万バーツの住宅を買う際、銀行融資は4,000万バーツまで、(b)残り1,000万バーツ(20%)は頭金として自己負担。
タイ中銀は2020年以降、(i)不動産投機の抑制、(ii)家計債務の制御、(iii)金融システムの安定、を目的にLTV規制を導入してきた。
現在の標準規制は次の通り:
しかし、(A)経済減速、(B)不動産業界の悲鳴、(C)中東情勢による生活費上昇、を受けて、中銀は2024年から緩和措置を実施してきた。
今回の緩和延長の内容
タイ中銀が5月18日に決定した緩和の延長内容:
第1に、対象期間。当初の2569年6月30日終了から、2570年6月30日(2027年6月30日)まで1年延長。
第2に、緩和の具体内容。LTV上限を100%とする(頭金なしでも住宅ローン可能)。
第3に、適用条件:
- 担保額1,000万バーツ未満の住宅で、2件目以降の契約
- 担保額1,000万バーツ以上の住宅で、1件目から
第4に、適用期間。2569年7月1日(2026年7月1日)から2570年6月30日(2027年6月30日)までに新規契約した住宅ローン。
第5に、性質。一時的措置。経済状況の改善があれば、期限切れ時に元のLTV規制に戻る可能性。
なぜLTV緩和が延長されたか—3つの理由
ウィタイ中銀総裁は緩和延長の理由として次を挙げた。
第1に、不動産市場の需要弱含み。経済減速で住宅取得を控える消費者が増加、開発業者の販売・在庫処分が困難。
第2に、中東情勢の悪化。事業者の建設コスト(鉄鋼・セメント・労務費)の上昇、家計の購買力低下。
第3に、信頼回復の必要性。不動産業界全体の信頼維持のためには、政策的支援が必要。
中銀の目的は、(a)不動産市場の安定維持、(b)関連産業(建設・建材・金融)の雇用維持、(c)家計の住宅取得機会の確保、にある。
関連背景
タイ駐在の日本人で住宅取得を検討する家庭にとって、今回の延長は次の意味を持つ。
第1に、頭金ゼロでの住宅ローン取得が可能(条件を満たせば)。これまで頭金10〜30%が必要だった負担が大幅軽減。
第2に、購入対象の幅が広がる。バンコク中心部のコンドミニアム・スクンビット周辺のアパート・東部経済回廊EEC周辺の戸建てなど。
第3に、投資物件の取得。2件目以降の住宅でも100%融資可能なため、駐在員の不動産投資が活性化。






