タイ大手シンクタンクのKasikorn Research Center(カシコーン・リサーチ・センター)が5月18日、タイ経済2569年(2026年)通年GDP予測を、(a)4月時点予測の0.8〜1.2%から、(b)新予測の2.0%に大幅上方修正した。理由は、(i)第1四半期GDPが前年同期比+2.8%と当初予測を上回ったこと、(ii)民間投資のモメンタムが想定より強いこと、(iii)政府の4000億バーツ借入緊急勅令の経済刺激効果、の3点。タイ最大手金融機関カシコーン銀行系のシンクタンクが、わずか1ヶ月で予測を倍近く引き上げる異例の調整。中東情勢悪化による下押し要因を、好調な国内需要が打ち消す構造となっている。在タイ駐在員家庭・日系企業にとっては、(A)タイ消費市場の好調維持、(B)バーツ為替の安定、(C)製造業の生産環境改善、を示す好材料だ。
1ヶ月で予測を倍に—異例の上方修正
第1に、4月時点(前回予測公表時): 中東情勢悪化(イラン情勢・ホルムズ海峡封鎖)による原油・エネルギー価格の急騰、観光業の減速、を主因として、2569年通年GDP予測を0.8〜1.2%と保守的に設定。
第2に、5月18日(今回予測公表): 直近のNESDC(国家経済社会開発委員会)が発表したQ1 GDP 2.8%が予測を大きく上回り、シンクタンク予測の前提が崩れた。
第3に、結果として2.0%に上方修正。0.8%上限ベースで2.5倍、1.2%上限ベースで1.67倍の引き上げ。
1ヶ月でこれほど大きな予測修正は、(a)経済情勢の急変、(b)政府政策の効果が想定を超える、(c)シンクタンクの当初予測の保守的バイアス、のいずれかを示す。
Q1 GDP 2.8%—予測を上回った3つの要因
NESDCが5月18日朝に発表したQ1 GDP 2.8%は、KResearchの予測(1.2-1.5%程度)を大幅に上回った。
予測超過の主因は次の3点。
第1に、民間投資の好調。Q1 投資総額+9.9%(2015年以来44四半期ぶりの高水準)、特に民間投資+10.1%。機械・設備・自動車設備の更新需要。
第2に、政府支出の拡大。2569年予算の早期執行、4000億バーツ緊急勅令の経済刺激効果。
第3に、民間消費の継続。中東情勢悪化による生活費高騰の中で、政府の燃料補助・所得補助で消費を維持。
これら3要素で、Q1 GDP寄与は合計4.3%に達した。
4000億バーツ借入緊急勅令の経済刺激効果
アヌティン首相が3月に発令した4000億バーツの借入緊急勅令(พ.ร.ก. กู้เงิน 4 แสนล้านบาท)は、KResearchの予測上方修正の主要根拠の一つ。
借入金の使途は、(a)中東情勢悪化への経済対策、(b)石油基金の補填、(c)観光業支援、(d)中小企業支援、(e)農業支援、(f)雇用対策、など多項目。
KResearchの試算では、4000億バーツの借入が、(i)GDPに約0.5〜0.8%の押し上げ効果、(ii)雇用約50万人の維持・創出、(iii)地方経済への波及、をもたらすと想定。
ただし、(A)憲法裁判所への違憲審査申請(5/18受理)、(B)裁判結果次第で執行停止の可能性、(C)財政赤字拡大の懸念、もある。
輸入急増の謎—25.4%増の意味
Q1のもう一つの特徴は、財輸入が前年同期比+25.4%と急増したこと。
KResearchは輸入急増の要因を次のように分析:
第1に、設備投資のための機械輸入増加。民間投資+10.1%と連動。
第2に、原油・LNG・石油製品の輸入増加。中東情勢悪化前の駆け込み購入と価格高騰の影響。





