中国の税関GACC(中国海関総署 = General Administration of Customs of China)がタイの鶏肉解体工場22社のうち17社をブラックリスト入りさせたことが5月18日、ニコム・ブンウィセット元プアタイ党比例代表議員によって明らかになった。原因は「外国人代名義詐欺(สวมสิทธิ์)」で、他国産の鶏足をタイ製と偽って中国へ密輸していた組織的な犯罪が発覚したためだ。中国側はタイの製造能力以上の輸出量を確認し、警告書を送付したが対応がなかったため、ブラックリスト発動に踏み切った。タイ側の輸出損失は300億バーツ(約1,380億円)規模に上り、業界はスリヤ・ジュンルアンルアンキット農業協同組合大臣に陳情、犯人特定を要請している。タイの最大食品輸出市場の一つである中国向け鶏肉貿易が、組織的詐欺により大きな打撃を受けた構図だ。
事件の経緯—中国側の調査からブラックリスト発動
事件の発端は中国側の食品輸入検査だった。中国の食品関連当局は、タイから中国に輸出される鶏足(チキンフィート、ตีนไก่)の量が、タイ国内の鶏肉解体工場の生産能力を超えていることに気付いた。
中国は調査チームをタイに派遣し、現地の解体工場の生産能力・輸出記録・出荷ロットを精査。その結果、(a)タイ国内の実生産能力を大きく超える量が「タイ製」として輸出されている、(b)第三国(おそらく他のアジア諸国、または南米諸国)からの鶏足が「タイ製」と偽装されて中国に流入している、(c)タイの一部解体工場が他国製鶏足の「代名義(สวมสิทธิ์)」貸しに関与している、ことが判明した。
中国食品当局は最初、GACC(中国海関総署)を通じてタイ側に警告書を送付した。しかし、警告に対する適切な対応がなかったため、最終的に「タイ鶏肉解体工場22社中17社をブラックリスト入り」という厳格な措置に踏み切った。
300億バーツの輸出損失
ブラックリスト入りした17社は、中国向け鶏足輸出が事実上停止することになる。タイ食品業界の試算によれば、これによる輸出損失は300億バーツ(約1,380億円)規模に達する見通しだ。
タイは中国向け鶏肉・鶏足輸出の主要供給国の一つで、(1)タイの食品加工業者が中国市場依存度の高さ、(2)鶏足は中国で「肉湯・煮込み・前菜」として人気の高い食材、(3)1日数十トン規模の出荷、という背景がある。
中国市場へのアクセス停止は、(a)タイの鶏肉産業の急速な収益悪化、(b)中小解体工場の経営圧迫、(c)養鶏農家への波及、(d)タイ農業大臣のキャリアへの政治的影響、という複合的なダメージを生む。
「外国人代名義詐欺」の仕組み
事件の中核となる「外国人代名義詐欺(สวมสิทธิ์)」とは、(a)他国(おそらくブラジル、米国、欧州、東南アジア他国)の鶏足を、(b)タイの解体工場経由で「タイ製」として輸出書類を発行し、(c)中国側の輸入許可・関税優遇を受ける、という詐欺的な構造だ。
なぜこの詐欺が起きるか:(1)タイは中国とFTA(自由貿易協定)があり、関税優遇を受ける、(2)中国側の動物衛生・食品安全基準でタイ製は通りやすい、(3)他国産は中国向け直接輸出に制限がある場合があり、迂回輸出ルートとして利用される、という構造的要因がある。





