タイの中高生科学チームが、5月9日から米アリゾナ州フェニックスで開催された「REGENERON ISEF 2026(Regeneron International Science and Engineering Fair)」で計6つの賞を獲得した。同コンテストは世界60か国から青少年1,800人が参加する世界最大の青少年科学コンテストで、タイ代表は8チームを派遣。中でもチェンマイの「プリンスロイヤルズ大学校(Prince Royal's College)」が、「マラリア5主要株を完全検出する革新(นวัตกรรมตรวจเชื้อมาลาเรียได้ครบ 5 สายพันธุ์สำคัญ)」で世界1位を獲得した。タイ政府が推進するSTEM教育の成果が国際舞台で結実した形で、医療・診断技術分野での若手人材育成の柱として注目されている。
REGENERON ISEF 2026とは
REGENERON ISEFは、米国の非営利団体Society for Scienceが主催する世界最大の青少年科学コンテストだ。1950年から続く伝統あるイベントで、毎年世界各国の中高生が独自の研究プロジェクトを発表し、賞を競う。バイオメディカル、エンジニアリング、コンピュータサイエンス、環境科学など23のカテゴリーで審査が行われる。
2026年大会は米アリゾナ州フェニックスで5月9日から開催。60か国から1,800人の青少年が参加し、グランドアワード(1〜4等)と特別賞(企業・団体・大学スポンサー賞)が授与される。
タイ代表8チームと派遣体制
タイは、(1)国立科学博物館(NSM)、(2)高等教育・科学・研究・イノベーション省(อว.)、(3)タイ科学協会(在王室御用達)の三者連携で代表チームを派遣している。今年は8チームが選抜・派遣された。
国内予選を勝ち抜いた中高生たちは、英語でのプレゼンテーション、専門審査員とのQ&A、ポスターセッションを経て、世界の同世代と競う。タイにとってISEFは「STEM教育の到達点」を測る重要な指標になっている。
プリンスロイヤルズ「マラリア5主要株検出」が世界1位
タイ最大の成果は、チェンマイの「プリンスロイヤルズ大学校(Prince Royal's College)」が世界1位(カテゴリー1等)を獲得したことだ。テーマは「マラリア5主要株を完全検出する革新」。
マラリアは原虫感染症で、主な原因虫はPlasmodium falciparum、P. vivax、P. malariae、P. ovale、P. knowlesiの5株。現在の診断技術では1〜2株しか同時検出できないものが主流で、5株全てを1回の検査で識別できる技術は医療現場で大きな価値がある。タイは依然としてマラリア常在地域があり、特に北部・西部の国境地帯で症例が報告されている。
プリンスロイヤルズはチェンマイの伝統的キリスト教系名門校で、STEM教育に強みがある。今回の研究は地域の医療課題に直結する応用研究として評価された。
計6賞獲得の意味
タイチーム全体で6賞獲得という成績は、参加60か国の中でも上位に入る健闘ぶり。タイのSTEM教育投資が「点ではなく面で」結実してきていることを示す。具体的な賞内訳は、グランドアワード1等(プリンスロイヤルズ)に加え、複数の特別賞(企業スポンサー賞・大学賞)が含まれているとみられる。
タイ政府は2017年以降、「Thailand 4.0」政策でSTEM教育の充実とイノベーション人材育成を推進してきた。BOIによるPCB・半導体・AI関連投資の拡大(5月17日に220億バーツの追加承認)と合わせ、技術人材の世代を縦の連携で育てる方針だ。
関連背景
子女がインターナショナルスクール(プリンスロイヤルズ含む)に通う日本人駐在員家庭にとって、ISEFは「タイの理系教育レベル」を測る指標として有益だ。バンコクのインターナショナルスクール(NIST、ISB、Wells、Harrowなど)も、独自の科学コンテスト参加を後押ししており、タイの教育投資の追い風を活用できる。
また、子どもの大学進学を見据えた場合、ISEF 1等・特別賞は米国大学(MIT、Stanford、Harvard等)の出願時に大きな評価ポイントとなる。タイ国内の科学教育水準が国際的に認められてきている流れは、駐在員家庭の教育選択肢にも影響する。