タイ中央銀行(BOT)が2026年5月14日、タイ初のバーチャル銀行(支店を持たないデジタル銀行)として「CLICX(クリックス)」に正式な営業認可を交付した。出資はKTB(クルンタイ銀行)が41%、AIS(タイ最大の通信会社)が39%、OR(PTT傘下の小売事業)が20%という3社の合弁体制で、合弁会社「Thai Trinity Holding」を通じて運営される。2026年6月の本格開業を予定し、地方住民・小規模事業者・銀行サービス未満世帯を主要ターゲットに、スマートフォン完結型のサービスを提供する。在タイ日本人の銀行口座選択や送金手段にも影響する歴史的なライセンス交付だ。
KTB 41% + AIS 39% + OR 20%の合弁体制
CLICXは「Thai Trinity Holding」という合弁会社を通じて運営される。出資比率はKTB(41%)、AIS(39%)、OR(20%)の3社で、それぞれの強みを組み合わせた構造になっている。KTBは大手商業銀行としての金融基盤、AISは4400万契約超の通信ネットワークと利用者基盤、ORはPTT傘下のCafé Amazon・PTT Station・OR Pet等で築いたリテール拠点とポイントエコシステムを提供する。3社の組み合わせは「銀行 × 通信 × 小売」という、タイの生活に密着した連携になっている。
2025年6月に財務相認可、5/14に正式営業認可
CLICXのライセンス取得には段階的なプロセスがあった。2025年6月19日にKTBが財務大臣からの認可を取得し、2025年8月8日に「CLICX Bank PCL」を登録資本金5000万バーツで設立。その後、BOTが正式な営業認可を5月14日に交付し、これでタイの法的枠組み内で銀行業務を開始できる状態になった。6月の本格開業に向けて、システム・コンプライアンス・カスタマーサポートの最終調整が進む。
SCBX「Bank X」とCP「ACM Holding」も同時期にライセンス取得
タイのバーチャル銀行ライセンスは複数事業者に発行されており、SCBX(サイアム商業銀行ホールディングス)の「Bank X」、CP Group傘下のACM Holdingも同じタイミングでライセンスを取得している。CLICXが先行して認可を得た形だが、6月以降は3つのバーチャル銀行が同時に競争する展開になる見込みだ。それぞれの戦略は異なり、CLICXが「地方・小規模事業者」、SCBXが「中産階級・若年層」、ACMが「CP系の食品・小売エコシステム」を狙う構図と見られている。
在タイ日本人のチェックポイント
CLICXの主要ターゲットはタイ人のアンダーバンクド層(銀行サービスにアクセスしにくい人)だが、在タイ日本人駐在員・移住者にもメリットがある。具体的には(1)支店を訪問する必要がない口座開設、(2)24時間スマートフォン操作の取引・送金、(3)KTB既存ネットワークとのシームレス連携、(4)AIS回線契約者向け特典・割引、(5)OR/Café Amazon/PTT Station でのキャッシュバック等が想定される。日本人向けサービス対応(英語UIや日本円送金など)の対応がどこまで進むかは、6月の正式開業時に明らかになる。当面は既存の三井住友海上タイ・MUFGバンコク支店・SMBC・三井住友信託タイ等と並列で選択肢として検討する形になりそうだ。