バンコクで日雇い労働者やライダー、バイクタクシー運転手など低所得層向けに20バーツの定食を提供する小規模事業「イムトン・プロムファン」が、新モデル「ファークイム(預けて満腹)」を試験運用している。地域商店や運転手の休憩所に食事を委託販売する仕組みで、20バーツの価格を据え置いたまま、対象層へのアクセスを広げている。
バンコクで20バーツ食堂が新モデル、地域商店に委託販売
事業を運営するのは「イムトン・プロムファン」という小規模食事業者で、エネルギー価格の変動と生活コスト高の影響を受ける都市の低所得層に「安価で空腹を満たす食事」を届けることを目的としている。これまでも鶏粥(カオマンガイ)を1杯20バーツで提供する移動車販売を試みていたが、駐車場所・営業時間・対象層へのアクセスといった制約が大きかった。新モデルでは、移動車を「販売拠点」から「配送拠点」に位置づけ直し、地域の商店や運転手休憩所に食事を委託する形で広域展開を狙う。
キープムーソイで試験運用、ライダー・タクシー・日雇いがメイン顧客
最初の試験運用地はバンコクのキープムーソイで、日雇い労働者の往来が多い場所として選ばれた。ここを起点に、ライダー、タクシー運転手、バイクタクシー運転手など収入が日々変動する職種の人たちに、20バーツのまま食事を届けている。地元商店や運転手の集まる場所に食事を預けることで、食事業者は移動車1台で複数地点をカバーでき、結果的に1食あたりの提供コストを抑えられる構造になっている。
エネルギー価格高騰下の食コスト、20バーツの戦略的価値
タイでは過去数年、エネルギー価格の上下動と都市部の家賃・食費の上昇が低所得層を直撃してきた。日々収入が変動するギグエコノミー従事者にとって、1食あたりの支出はその日の生活水準を左右する。「20バーツ」という価格は、現在のバンコクの食事相場(屋台でも50〜70バーツが標準)からすると突出して安く、こうした価格設定をビジネスとして成立させる仕組みづくり自体が社会実験的な意味を持つ。
在タイ日本人にも示唆、タイ社会の階層と「都市の見えない貧困」
タイの都市部はタワー型コンドミニアム、ショッピングモール、日系飲食店が並ぶ華やかな表の顔と、ビルの裏側で日雇い労働や配送で日銭を稼ぐ人々の生活が共存している。在タイ日本人駐在員にとっては、ふだん接する機会の少ない「もう一つのバンコク」を理解する手がかりになる事例だ。20バーツの食事に並ぶ人々の存在は、タイ全体のインフレと最低賃金、ギグエコノミーの広がりを語るときに無視できない要素になる。