タイのアヌティン首相兼内務相が5月7日から9日にかけて、フィリピン・セブで開催される第48回ASEAN首脳会議に出席する。タイ政府とカンボジア政府の長年の懸案だった海域協議の枠組み「MOU44」を撤回した後、初めてフン・マネット・カンボジア首相と直接顔を合わせる外交機会となるため、タイ・カンボジア関係の方向性を占う場として国内外で注目を集めている。タイ首相室の報道官ラチャダー・タナディーレック氏が5月6日に発表した。
第48回ASEAN首脳会議のメインテーマは「Navigating Our Future, Together(共に未来へ航海する)」で、世界情勢の変動が続くなかでASEANとしての結束と方向性を打ち出す場として位置づけられている。タイ政府としてはこのASEAN会議の場で得られる成果を、タイ国民の具体的な利益に結びつける橋渡し役を果たすと、報道官は政府の姿勢を強調した。
出席するメンバーには地域の主要プレイヤーが揃う。ブルネイ国王ハサナル・ボルキア陛下、カンボジア首相フン・マネット氏、インドネシア大統領プラボウォ・スビアント氏、ラオス首相ソンサイ・シーパンドン氏など、ASEANの全主要国の首脳または高位代表が顔を見せる予定で、地域協力と二国間外交の両方が動く密度の高い3日間になる。
なかでもタイの世論が注視するのが、フン・マネット首相との直接対面である。タイ・カンボジア間ではタイランド湾の大陸棚重複海域の協議枠組み「MOU44」が25年以上膠着していたが、5月5日に閣議で正式に撤回が決議された直後にあたる。撤回はカンボジアとの対立を意図したものではなく、UNCLOSなどの国際枠組みに乗り換える政策判断だとアヌティン首相は説明していたが、カンボジア側がどう受け止めているかは公式には明らかになっていない。
セブでの対面はその「カンボジア側の反応」を初めて直接読み取れる場となる。アヌティン首相は撤回決議の段階で「Thailand First」を掲げつつも、フィリピンASEANでの会談には問題はないと述べていた。一方で、カンボジア側はUNCLOS下の強制調停メカニズム使用を示唆するなど、外交カードを切ろうとする動きも見える。第48回ASEAN会議の場でどのような言葉が交わされるかが、今後の両国関係の流れを左右する初動になりそうだ。