タイ南部ナコンシータマラート県ナーボン郡ケーオサーン区の麻薬治療センターで5月6日朝、約500人の患者が一斉に逃走を試みる前代未聞の事件が発生した。監禁状態によるストレスの蓄積が原因と推定されており、第8警察区副司令官代理が現場で陣頭指揮を執る大規模な追跡作戦が展開された。死傷者や財産被害の報告はなく、最終的に全員の所在が把握されたと報じられている。
通報があったのは5月6日午前7時20分で、警察ラジオセンター(191)に「治療センター内で混乱が発生し、多数の患者が一斉に逃げ出している」との一報が入った。発生場所は同県ナーボン郡ケーオサーン区にある麻薬リハビリテーション施設で、入所中の患者およそ500人が同時に施設外への脱出を試みたとされる。
現場指揮を執ったのはナコンシータマラート県警察長代理を兼務するポーンチャイ・カチョーンクリン警察少将(第8警察区副司令官代理)で、副官としてカチット・コンプラップ警察大佐も同行した。地元のナーボン署からはケーセムシット・チャムパートン警察中佐(副捜査代理)が対応にあたり、警察各部隊と治療センターの職員、地元行政が連携して追跡網を組んだ。
逃走の背景については、患者が長期間にわたって閉鎖環境で管理されていたことによるストレスが原因と推定されている。麻薬依存からの離脱治療は精神的・身体的な負荷が高く、収容環境への不満や家族との分離感が一気に蓄積した結果、集団行動に発展した可能性がある。具体的な引き金となった出来事については現時点で公表されていない。
幸いにも、現場検証の段階では患者・職員いずれにも怪我はなく、施設の建物や備品にも目立った被害は確認されなかった。警察は逃走した患者の身柄確保を優先しつつ、地元住民に対しても不審な行動の人物を見かけた場合は速やかに通報するよう呼びかけた。タイ国内の麻薬リハビリ施設では収容人数の多さと管理体制の難しさから、過去にも局所的なトラブルが報告されているが、500人単位の集団脱走は極めて珍しい事案として注目を集めている。