タイの大手スーパーマーケット「BIG C(บิ๊กซี)」が、全国90支店にEV(電気自動車)充電器を計111箇所設置し、サービスを開始した。タイ国内のEV普及加速に対応した小売×エネルギーの本格的なインフラ統合事例で、ショッピング中に車を充電できる利便性を打ち出している。
充電インフラの構築は、エネルギーとテクノロジーの主要パートナー7社との連携で実現した。具体的にはPTT-OR(タイ石油公社系)、EA Anywhere、Tesla、EVOLT、GINKA、ESPRO、CHARGE PLUSの各社が協力した。タイ国内のEV充電ネットワークの主要プレイヤーが一堂に揃った形で、複数のメーカー・規格に対応したワンストップ型の充電拠点を全国に展開する構図となる。
利用者の側面から見ると、自宅以外のEV充電場所として「日常の買い物先」が選択肢に加わる意味は大きい。これまでタイのEV充電は専用ステーションかガソリンスタンド併設型が中心だったが、スーパーマーケットの駐車場で買い物中に充電できるようになることで、待ち時間がなくなる。30分から1時間の買い物時間と急速充電のサイクルが完全に一致するため、長距離ドライバーにも普段使いユーザーにも合理的な選択肢になる。
BIG C側はこの取り組みを企業の温室効果ガス排出削減戦略の一部として位置づけている。同社は「Net Zero(温室効果ガス排出量ネットゼロ)」を目標に掲げており、自社の事業運営での排出削減(Scope 1・2)に加えて、サプライチェーン全体やお客様の活動を含むScope 3の領域にも踏み込む方針だ。EV利用客に充電インフラを提供することは、BIG Cの環境戦略を顧客の日常生活と直接結びつける施策となる。
タイの自動車市場ではEVシェアが伸び続けている一方で、地方部の充電インフラの不足が普及の足を引っ張る要因とされてきた。BIG Cは全国に支店網を持つ強みを活かし、首都圏に偏らず地方都市にも充電ポイントを広げている。今後数年でタイ国内のEV充電器数は加速度的に増加する見通しで、小売チェーン主導のインフラ構築モデルが他のチェーン店にも広がる可能性がある。