トラン出身で35歳のタイ人女性プラエティップ・ティンブアが、10年連れ添った白いポメラニアン「カティ」を10万バーツ支払って取り戻した。病気で入院中に知人の紹介で犬の世話を頼んだところ、回復後に世話代を請求されて返還を拒否されていた。4月23日、バンコク東部ミンブリー警察署で双方立ち会いのもと現金が渡され、カティは飼い主の腕に戻った。
事の起こりは2025年2月である。プラエティップは脳卒中で倒れ、治療のためバンコクの病院に搬送された。当初はトランに残る妹のフェットが犬の面倒をみていたが、その妹も続けて脳卒中に倒れ、身内では世話を続けられなくなった。困り果てたプラエティップは、オンラインで知り合った支援者ニッキーに相談する。ニッキーは治療費として50万バーツ以上を立て替えて無償で援助してくれた人物で、プラエティップにとっては恩人だった。
ニッキーは自身が養子として引き取っていたチームという男性に犬の世話を任せることを提案した。チームはトランのプラエティップの自宅からカティを連れていき、バンコクで預かった。数か月後、プラエティップは体調を取り戻し、愛犬を引き取りに行った。ところがチームは返還に応じず、これまでの世話代として10万バーツを要求した。
泣き寝入りするしかないと思い悩んだプラエティップは、自分の窮状をTikTokに投稿した。「命の恩人の養子なので波風は立てたくないが、10年飼った家族を取り戻したい」という訴えは瞬く間に拡散し、大手民放Channel 3の情報番組「ホーン・クラセー」が取り上げた。司会者のカンチャイ・カムヌートプローイは、「きちんと飼う意思があるなら10万バーツを無利子で貸す」と申し出たという。
双方はすでに警察に届け出を出していた。4月23日、ミンブリー警察署での会談に応じた両者は、プラエティップが10万バーツを支払うと同時にチームがカティを引き渡す形で合意した。刑事告訴はその場で取り下げ、民事的な決着となった。数か月ぶりに戻ったポメラニアンは飼い主の腕の中で落ち着いた様子だったと現地報道は伝えている。
タイでは「犬は家族」という感覚が強く、寺院にまで犬が棲みついているほどペット文化が根づいている。一方で獣医代や長期預かり費用をめぐる金銭トラブルは日本人の目から見ても無視できない頻度で報じられる。今回のように預けた側が身代金のように請求された事例は珍しいが、ネット上で知り合った相手に大事な家族を託すリスクの高さを示した格好だ。プラエティップは「犬と会えない日々が一番つらかった」と番組で涙を流しており、在タイ外国人にとっても長期離脱時のペット管理を考えさせる一件となった。