タイ南部ナコンシータマラート県ムアン郡タークサク地区のパークナコン通り沿いにあるラブホテルで4月22日夜、裸半身で発見された女性キムヨンさん(31歳)の死因が枕で顔を押さえつけられたことによる窒息死だったことが、23日までの法医学的検視で判明した。警察は同日、有力な容疑者として被害者の交際相手の男、ウィタワットこと通称「シアン・クルアイ(バナナの達人)」容疑者(50歳)を特定、逮捕状の発付手続きに入った。
シアン・クルアイ容疑者はナコンシータマラート県内のスヌーカー(ビリヤード系)業界で名の知れた競技者で、地元のスヌーカー場を拠点に賭け試合を重ねていたとされる。「クルアイ(バナナ)」という独特の愛称は、スヌーカー業界のニックネームとして地元ファンには広く認知されていた。
検視担当医は、被害者の口腔粘膜と両腕に明らかな打撲痕を確認しており、押さえつけられながら抵抗した形跡が読み取れると説明している。室内に残されていたポケットナイフや、浴室に落ちたスマートフォン、冷蔵庫の上の半分残ったビールといった前日から報じられた痕跡と合わせ、事件性の高さが一層強まった。
ホテルの防犯カメラには、2人が22日の昼11時55分ごろにバイクでチェックインする様子がはっきり映っていた。2人乗りで到着し、ウィタワットが運転、キムヨンさんが後席という配置。フロントで身分証を提示して部屋鍵を受け取った時点では、トラブルの兆しは映像からは読み取れない。
ムアン・ナコンシータマラート警察署長のキティチャイ・クライナラ大佐は、22日の段階で全方位の捜査を指示し、防犯カメラ映像の解析、関係者の聞き取り、被害者の携帯電話のデータ復元を同時並行で進めていた。裁判所への逮捕状申請では、殺人容疑とCCTV・医学的所見に基づく一連の証拠が提示される。
タイではスヌーカー・プール・ビリヤードは庶民のナイトライフに溶け込んでいる一方で、賭け金のやり取りと個人間のトラブルが事件に発展するケースが断続的に報じられてきた。今回の被害者と容疑者の関係が、恋愛のもつれだけなのか、金銭や賭け関連の軋轢も絡んでいるのかは、逮捕後の取り調べで徐々に明らかになる見通しだ。
タイ駐在の日本人にとっては、夜遊びスポットで知り合った相手と短時間ホテルに移動するというシチュエーションが、国籍や性別を問わず一瞬で殺人事件の現場に変わり得ることを示す事件だ。個室に入る前に身分・勤務先を写真で誰かに送っておく、ドアの内鍵を自分で掛けてもらえる施設を選ぶ、といった基本の自衛策を改めて意識しておきたい。