ワット・テープ・ピム・チョーイ寺院で4月20日から21日にかけて営まれた葬儀で、棺の前でコヨーテダンサー3人が踊る動画がSNSで急速に拡散した。故人は慢性病で亡くなったウィニット氏59歳で、家族は「本人の最後の願い」としてプロのダンサーを雇い、約束を果たす形で送り出した。
タイの葬儀は日本のそれとは雰囲気が大きく違う。読経と僧侶による供養が軸にありつつも、地域と故人の人柄によっては賑やかな音楽・食事・芸能の要素が加わる。とくにイサーン(東北部)や中部の地方では、故人の人生を祝うという意味合いで、生前好きだったものを葬儀に持ち込むケースが珍しくない。
今回の葬儀でも、踊りに合わせた音楽が流れ、「楽しさと娯楽」に満ちた雰囲気だったと報じられている。参列者の多くは動画や写真を撮り、一部は自分もダンサーに交じって踊り始めた。動画はFacebookを中心に拡散し、「葬儀でコヨーテ」というキーワードで関連コメントが大量に飛び交った。
「コヨーテダンサー」はタイで生まれたクラブ・バーの定番スタイルで、短いショートパンツとタンクトップで激しく踊る女性ダンサーを指す。本来は夜の歓楽街の文脈で使われる表現で、葬儀の場で登場するのはイレギュラーではある。それでも「本人の遺言なら」という理屈で家族が実行に移したのは、タイの葬儀文化の幅広さを示している。
賛否は分かれている。「本人が望んだのだから尊重されるべき」という意見がある一方で、「寺院の場にふさわしくない」「参列者の品位が問われる」と眉をひそめる声もSNSに並んでいる。タイでは一部寺院で「賑やかすぎる葬儀」への規制を設ける動きがあり、今回のケースも議論を再燃させそうな気配がある。
在タイ日本人にとっては、「タイの葬儀に参列するときの心構え」を改めて確認させる1件となる。静粛さを基本とする日本式の感覚で臨むと、地方によってはそのギャップに戸惑う場面がある。故人の遺志を尊重する文化であるため、家族がどのような形を選んでもそれは家族の判断として受け止められるのが基本姿勢である。