タイ軍は2026年4月10日、カンボジア側が「タイ軍がスリン県チョンジョム国境地帯に侵入した」と主張したことに対して反論する声明を発表した。タイ・カンボジア合同国境センター(JIC)を通じて、2025年12月27日のGBC(国境一般委員会)特別会議で双方が合意した「現行配備ライン(Troop Deployment Line)の維持」の取り組みを改めて強調した。
タイ側の説明の核心は「タイ軍の配備はGBC合意に完全に準拠している」という点だ。カンボジア軍がスリン県チョンジョム国境付近(旧カジノ・タモダ地区)の建物・施設を軍事基地として利用し、タイへの攻撃拠点にしたため、タイが当該エリアを防衛目的で確保したと説明した。さらに越境詐欺拠点(スキャマーセンター)の存在が確認されたことも、タイ軍配備の正当性の根拠とした。
タイ・カンボジア国境紛争は2008年のプレアビヒア寺院問題以降、断続的に続く懸案事項だ。2011〜2012年には両軍が銃撃戦を行い死傷者が出た。近年は越境詐欺組織(コールセンター詐欺、ラブ詐欺、仮想通貨詐欺など)の根絶という新たな共通目標が生まれたことで、一定の協力関係が形成されたが、領土問題の根本的な解決には至っていない。
今回のカンボジアの抗議は内政向けのアピールとの見方もある。タイ側は公開した写真・証拠をもとに自国の立場を国際社会に発信した。JICはASEAN憲章の原則に基づく対話継続を確認しており、直接的な武力衝突には発展していない。
タイとカンボジアの間の貿易は年間数十億ドル規模で、両国の経済的な相互依存関係は深い。在タイ日系企業の中にはカンボジアとの国境地帯での物流を活用している事業者もある。国境の緊張が高まるとサプライチェーンへの影響が出る可能性があり、注視が必要だ。