タイ上院議員がラジオによる災害警報の強化を政府に求めた。ウタイターニー県選出のストン・クラーカンカーイ上院議員が9日、国会での施政方針討論で防災体制の見直しを訴え、トランジスタラジオの国民への無料配布を提案した。
政府はデジタル基盤を活用した緊急警報システムの一元化を政策に掲げている。現在の柱となるセルブロードキャスト(Cell Broadcast)は、AIS・TRUE・NTの3大通信事業者が保有する11万2621基の基地局を通じ、対象地域の携帯電話に一斉にメッセージを送信する仕組みである。さらにデジタルテレビ23チャンネル、168基の送信塔を経由した情報伝達も可能となっている。
セルブロードキャストの最大の利点は、インターネット接続が不要な点にある。通信インフラが被災した状況でも基地局が生きていれば警報を届けられるため、緊急時の即応性が高いと評価されている。
しかしストン議員は、携帯電話を持たない高齢者や山間部の住民への情報到達に課題が残ると指摘した。そこで補完手段としてトランジスタラジオの配布を提唱し、電波さえ届けば電源のみで受信できるラジオの利点を強調した。
一方で、セルブロードキャストの実効性は関係機関の連携と住民の理解度に左右されるとの認識も示された。定期的な訓練やテストの実施、警報を受けた際の具体的な行動指針の周知が不可欠であり、技術の導入だけでは防災力の向上にはつながらないとの見解が議場で共有された。日本では緊急地震速報やJアラートなど多層的な警報網が整備されているが、タイでも同様の体制構築に向けた議論が本格化しつつある。