タイ海軍のパーラット・ラッタナチャイパン報道官は3月29日、カンボジア側が国際外交団をタイ・カンボジア国境地帯に案内し「タイのコンテナ設置はカンボジアの主権侵害だ」と主張した件について正式に反論した。
タイの反論の論点
報道官は3点を強調した。第一に、コンテナと有刺鉄線の設置は両国が2025年に締結した共同声明第2条に基づく行動であり、主権侵害にはあたらない。第二に、設置の背景には「敵意のない人物による挑発行為と既存の障壁の破壊」があり、自衛措置として不可欠だった。第三に、コンテナの設置位置は双方が合意した部隊展開ライン(troop deployment line)の範囲内にとどまっている。
カンボジアの主張と国際外交戦術
カンボジア側は各国大使や国際機関の代表を国境地帯に招き、「タイが一方的に軍事設備を設置している」として国際社会へのアピールを試みた。タイ側はこれを「不当な情報発信」として批判している。
国境紛争でカンボジアが国際世論を活用する手法は今回が初めてではない。2008〜2011年のプレアビヒア寺院周辺での武力衝突時にも、カンボジアは国際司法裁判所(ICJ)への提訴を通じて外交的な主導権を握ろうとした経緯がある。
タイ・カンボジア国境問題の背景
両国の最大の係争点はプレアビヒア寺院(タイ名:カオプラウィハーン)だ。1962年のICJ判決で寺院本体はカンボジア領とされたが、周辺の土地の帰属は曖昧なままとなっており、2011年まで断続的な武力衝突が続いた。現在は比較的沈静化しているが、国境地帯での小規模なトラブルは継続している。今回のコンテナ設置をめぐる応酬は、両国間の緊張が再び高まっていることを示している。