タイ東北部スリン県サンカ郡で飲料水工場を経営するパイサーン・ジャンタキアオさん(60)が、燃料高騰による深刻な経営難を訴えた。9年以上にわたって「タナーティップ」飲料水工場を運営してきたが、月収がかつての10万バーツ超から5〜6万バーツへと半減した。
原因は直接的にディーゼル価格の急騰だ。工場では大型タンクを積んだトラックで周辺の住宅や事業所に飲料水を配送している。1リットルあたり約6バーツ値上がりしたディーゼルが、1日2〜3回の配送にかかるコストを大幅に押し上げた。燃料代の増加分をそのまま価格に転嫁できれば話は単純だが、競合工場との価格競争や顧客の収入水準を考えると、なかなか踏み切れない。
飲料水タンク1本の販売価格は当初10バーツだったが、燃料費の上昇を受けて12バーツに引き上げた。それでも採算が合わず、15バーツへの再値上げを検討している。加えてペットボトルやタンクなどプラスチック容器の仕入れ価格も上昇しており、原材料費・配送費の二重コスト増に挟まれた状況だ。
スリン県はタイ・カンボジア国境に近い東北部の農村地帯で、住民の多くは農業や小規模事業で生計を立てている。飲料水は都市部の水道網が普及していない地域では欠かせないインフラで、地方の中小工場が担ってきた。しかし燃料危機が直撃した今、経営者も顧客も等しく苦しい状況にある。値上げすれば顧客が離れ、値上げしなければ経営が続かないというジレンマだ。
パイサーンさんは「政府に燃料価格の問題を早急に解決してほしい。このままでは地方の小さな事業者はもたない」と訴えた。政府の石油基金補助や価格上限設定は大手・幹線道路沿いのスタンド向けには効果があるが、地方の末端経営者に恩恵が届くには時間差がある。タイ地方部の中小事業者が燃料危機でどれほど追い詰められているかを示す事例だ。