タイ保健省は2026年3月28日、ブンカーン県の病院に勤務する外科医を職務停止処分にした。この外科医が看護師に対して職業蔑視にあたる侮辱的な発言をしたことがSNSで拡散し、医療現場でのパワーハラスメント問題として全国的な議論を呼んだ。
問題の発端
ブンカーン県の公立病院で、外科医が看護師に対して「看護師は医師の手下だ」「命令通りに動けばいい」という内容の侮辱的な言動を行ったとされる。その場にいた関係者がSNSに投稿したことで一気に拡散した。
「医師は専門職として高い地位にあるが、看護師もケアの専門家として対等な尊厳がある」という観点からの批判と、「忙しい外科医に対して現場の摩擦が不当に大きく取り上げられた」という擁護の声が交錯した。
保健省の対応
保健省のソムルック・ジャーサン事務次官は「外科医と看護師の間で職業蔑視にあたる言動があったとの調査報告を受けた」と説明した。事実確認が完了すれば懲戒処分に進むとして、まず職務停止を命じた。
「これは仕事の負荷や忙しさの問題ではない。個人の行動の問題だ。どの職種においても相互の尊重と礼節は医療機関の基本だ」と述べ、職業蔑視を正面から否定した。
タイ医療現場のヒエラルキー問題
タイの医療機関では医師と看護師の階層が明確で、外科や内科の専門医が最上位に位置するカースト的なヒエラルキーが存在する。この構造は欧米よりも強く、日本の医療現場とも似た側面がある。
看護師の待遇改善と職業的尊重については、タイ看護師協会が長年訴えてきた課題だ。しかしSNSで問題が可視化され、大規模な批判が集まる事態は以前は少なかった。今回の件はSNSが医療現場の問題を「民主化」した事例の一つとして記録される可能性がある。
深刻化する看護師不足
タイでは看護師の不足も深刻な問題だ。地方病院での1人あたり患者担当数は基準を超えている場合が多く、看護師が燃え尽き症候群で離職するケースが増えている。こうした過酷な環境の中でのハラスメントはメンタルヘルスへの悪影響が大きく、看護師の離職に拍車をかけるという悪循環がある。