ノンタブリー県警察庁捜査本部の警察官テーワクリット・マニーラット警部(通称「ผกก.เม」、警察学校58期生)が、勤務時間外に市場で豚肉を販売している姿がSNSで話題になった。制服を脱いで普段着姿で豚肉を売るその姿に「実は潜入捜査なのでは」という冗談めかしたコメントが殺到したが、本人は「潜入捜査ではない。これは自分の生き方だ」と笑顔で語った。
3月28日、当人が空き時間に市場で豚肉を販売する場面が撮影され、SNSで拡散された。テーワクリット警部は「警察の仕事だけでは家族を養うには十分ではない」と率直に認め、副業で家計を補っているという。「職業は選ばない。足るを知る生活、油断なく生きる」という信念を語り、SNSでは好感と称賛の声が広がった。
タイでは公務員の給与は民間企業と比べて低い水準にとどまっており、警察官も例外ではない。署長クラスの警察官でも月給は3万から5万バーツ程度とされ、子どもの教育費や住居費を賄うには十分でないケースがある。地方では特に低い給与水準が問題となっており、副業を持つ警察官は決して珍しくない。農業、食品販売、タクシーなど様々な副業が知られており、テーワクリット警部の事例は「氷山の一角」と言える。
一方で、こうした状況は警察組織の構造的な問題とも絡んでいる。給与が低いことが汚職の温床になるという指摘は長年あり、警察改革を求める声と表裏一体だ。「正直に副業で家族を養う警察官」という姿は、タイ社会において真面目に生きることへの共感を集める一方で、警察の給与体系や待遇改善の必要性を再認識させるきっかけにもなっている。
タイの警察官の副業は法律上の規制があいまいで、業務外の時間に私的な商売を行うこと自体は禁止されていない。ただし職務上の便宜を副業に利用したり、利益相反が生じる場合は問題となる。今回のケースは純粋な食品販売であり、法的・倫理的な問題はないとみられている。「庶民に溶け込む警察官」という親しみやすいイメージが、かえって地域の信頼関係を強化するという見方もある。