タイが3月28日夜、世界自然保護基金(WWF)が主催する「アースアワー2026」に参加した。午後8時30分から1時間、全国で照明を消して気候変動への意識を高める取り組みだ。タイが現在進行形でエネルギー危機に直面しているというタイミングで、今年のアースアワーは例年以上に切実な意味を持つ行事となった。
タイ政府、観光庁(TAT)、各種市民団体がタイ国民と訪問中の観光客に参加を呼びかけた。バンコクのワット・アルン(暁の寺)やチャオプラヤー川沿いの歴史的建造物、グランドパレス周辺など、通常はライトアップされている観光名所も消灯に参加した。パタヤ、プーケット、チェンマイなど主要観光地でも官民連携で消灯が実施され、全国各地で「暗闇の1時間」が体験された。
アースアワーは毎年3月最終土曜の午後8時30分から9時30分の1時間、世界各国が同時に照明を消す取り組みだ。2007年にオーストラリアのシドニーで始まり、現在は180か国以上が参加する世界的なイベントに発展している。省エネや気候変動への関心を促すことが主目的だが、その「消灯」という行動には実際のエネルギー削減効果もある。
2026年のタイにとって、アースアワーの意義は象徴的な面を超えて現実的な緊急性を帯びていた。ホルムズ海峡をめぐる中東情勢の緊張でWTI原油価格が99ドル台に達し、タイではガソリン・ディーゼルが一時的に供給不足となる事態が発生していた。石油基金の赤字が急拡大する中、政府は省エネの徹底を国民に呼びかけており、アースアワーへの参加はそのメッセージと完全に重なるものだった。
タイの電力構成は天然ガス火力が約6割を占め、太陽光・水力・バイオマスなどの再生可能エネルギーも徐々に増えている。1時間の全国的な消灯が電力消費に与える直接的な影響は限定的だが、省エネ意識の普及という観点では継続的な取り組みとして意義がある。今年のタイのアースアワー参加は、エネルギー危機を機に「節約する文化」への転換を後押しする契機ともなった。