タイ・エネルギー省は3月末、ソンクラン(4月中旬)までに燃料価格が1リットル70バーツに達する可能性を否定しなかった。担当者は「世界の原油価格がどこまで上がるかは保証できない」と明言し、国民に覚悟を求めた。
石油基金の余力が底を突く
国際原油価格は2〜3日の間に1バレル198ドルから243ドルへ急騰した。これを受けてタイ政府は深夜に一斉値上げを実施し、ガソホール95は41.05バーツ/L、ディーゼルは38.94バーツ/Lとなった。6バーツの一斉値上げに踏み切った時点で、石油基金の補填余力はほぼ限界に達していた。
石油基金は原油高の際に価格差を補填し、消費者価格を抑制するための制度だ。しかしホルムズ海峡封鎖後の原油急騰が想定を大きく上回り、毎日1,200億バーツ規模の支出が発生していた。これ以上原油が上昇すれば、補填できる余地がなくなる計算だ。
深夜発表の理由と実態
深夜の値上げタイミングについてエネルギー省は理由を説明した。シンガポール市場の終値と為替レートを確認した後に価格を決定するため、結果的に深夜の発表になるという。利便性より市場追随を優先する構造が、市民の混乱を招いている側面もある。
一方、石油商社や流通業者の買いだめを防ぐため、深夜の急告という形をとることで「待てば値段が変わる」という行動を封じているとの見方もある。エネルギー省の担当者はこの点については明言を避けた。
70バーツなら生活コストはどう変わるか
仮に70バーツ/Lが現実になれば、現在のほぼ倍の水準だ。タイの物流・交通・食品価格への影響は壊滅的になりかねない。
ソンクランの帰省を車で行う場合、バンコクから地方まで往復500kmを走るとすると、燃費15km/Lの車で33Lが必要になる。現在の41バーツなら約1,350バーツだが、70バーツなら約2,310バーツ。燃料代だけで約1,000バーツの負担増となる計算だ。
さらに、トラック輸送コストの上昇は食料品価格に転嫁される。タイの食卓を支えるカオパット1皿が60バーツを超えるようになれば、低所得者層には直撃となる。エネルギー省が「保証できない」と言い切った70バーツという数字は、単なる予測値ではなく、タイ社会が向き合わなければならない現実の可能性だ。