2026年の世界原油市場は単純な需給バランスでは動いていない。OECDの加盟国データやIEAの予測でも追い切れない複数の力学が重なり合い、タイの燃料危機を引き起こしている。khaosodが公開した1,882文字の分析記事が、その構図を整理した。
中心にあるのはOPEC+の減産政策と中東の軍事情勢という二つの「供給制限」の重複だ。OPEC+はシェア回復よりも価格維持を優先し、2024年から段階的な減産を継続してきた。ここにイランとイスラエルの軍事衝突が重なり、ペルシャ湾への物理的な脅威が生じた。「人為的な減産」と「紛争による物理的な供給途絶リスク」の二重の制約で、価格は一時的に歴史的な高値水準へと跳ね上がった。
一方で需要サイドには矛盾がある。中国・インド・東南アジアでは経済成長による石油需要の増加が続いているが、EV普及が加速している欧米では石油消費が鈍化している。「需要の地理的な移動」が起きており、アジア向けの原油スポット価格がヨーロッパ向けより割高になる「アジアプレミアム」が発生しやすい構造だ。タイはこのアジアプレミアムの影響を直接受ける立場にある。
タイ国内では石油基金の仕組みが限界を露わにした。石油基金は国際価格の急騰時に補助金を出して国内価格を抑える緩衝装置だが、価格高騰が長期化すると赤字が膨らみ持続できなくなる。石油基金の枯渇は即座に価格転嫁を意味し、消費者物価全体の押し上げ要因となる。石油基金に依存したエネルギー政策の構造的な脆弱性が今回の危機で浮き彫りになった。
原油市場の地政学化は今後も続く見通しだ。タイにとってはエネルギーの輸入源多様化と備蓄能力の強化、そして再生可能エネルギーへの転換加速が中長期的な解決策となる。タイの地政学的な中立外交を活かしながら、複数の産油国との長期供給契約を締結していくことも重要な課題だ。