タイ商務省は2026年3月、燃料高騰の波及による食料品・生活必需品の便乗値上げを防ぐため、合計7品目の価格統制(管理物資指定)に向けた公聴会を加速することを発表した。ただし商務省担当者は「7品目のうち一部はまだ管理物資の指定対象に完全には入っていない。手続きが追いついていない部分がある」と正直に認めた。
価格統制(管理物資制度)はタイの消費者物価保護法に基づくもので、商務省が指定した品目については事業者が価格を変更する際に政府の承認が必要になる。指定品目には砂糖・植物油・小麦粉・インスタントラーメン・米・調理油・卵などが含まれることが多いが、品目の追加・削除には正式な手続きが伴う。
今回問題となった7品目の具体名は報道段階では非公表とされたが、燃料高騰後に価格が上昇した食品・日用品が対象とされた。「すでに価格が上がっているのに指定の公聴会すら終わっていない」という状況は、制度の機動性の限界を示している。
タイの物価統制制度は「危機時に素早く動けない」という批判を受けることがある。公聴会・パブリックコメント・省令の発布という手順を踏む必要があり、急騰局面への即応には不向きだ。一方で、業者側からは「制度的な手続きを踏まない強引な価格抑制は違憲・違法の可能性がある」という異論も出ている。
タイ消費者保護協会は「緊急時でも法律に基づかない価格凍結は不適切だが、手続きを迅速化する特例規定を設けることは可能なはず」と指摘した。物価危機への即応と法的手続きの均衡をどう取るかは、日本を含む多くの国が直面する普遍的な課題だ。