チェンマイ選出のパタラポン議員(前進党)が2026年3月下旬、アヌティン首相に対し北部のPM2.5濃度が危機水準に達しているとして、正式に「災害宣言」を緊急要求した。住民の健康被害が深刻化しており、通常の空気汚染対策では不十分だという主張だ。
PM2.5の現状
2026年春、タイ北部のチェンマイ、チェンライ、メーホンソン、ランパーンなどでPM2.5濃度が「非常に有害」レベルを超える日が続いた。通常の空気質指数(AQI)で150〜200を超える状態が週単位で続き、山火事と農地焼き払いが主な原因とされた。
チェンマイ市内では外出制限が実質的に必要な状況で、学校閉鎖や屋外活動の自粛が続いた。長期的にPM2.5を吸い込み続けることは肺がん・心臓病・脳卒中のリスクを高めることが医学的に示されており、北部住民の健康への影響が懸念されていた。
「災害宣言」を求める理由
パタラポン議員が「災害宣言」を求めた理由は、宣言が出ることで複数の特別権限が生じるからだ。予算の緊急執行、他省庁からの人員・機材の動員、州境を越えた消火活動の強化、農業焼き払いの強制禁止命令などが可能になる。
通常の空気汚染対策は環境省や農業省の管轄で進められるが、省庁の縦割りで迅速な対応が難しいという批判がある。「災害」として位置づけることで、首相を頂点とした一元指揮体制を作れるという論理だ。
タイ北部の山火事と農業焼き払いの問題
PM2.5の主な発生源は、北部山岳地帯の山火事と農地の焼き払いだ。焼き払いは古来からの農業慣習で、農地の準備や残渣処理のために行われる。タイ政府は焼き払い禁止令を出しているが、農家の慣習的な行為への取り締まりは難しい。
近年は気候変動による乾燥化で山火事が大規模化する傾向も見られる。また、ミャンマー国境を越えた煙の流入も無視できない要因で、タイ単独の対策では限界がある。
住民の健康影響
長期的にPM2.5を吸い込み続けることで、呼吸器疾患・心血管疾患のリスクが高まる。特に子ども・高齢者・妊婦・基礎疾患を持つ人は影響を受けやすい。チェンマイの病院では、春期に呼吸器系で受診する患者が急増することが毎年繰り返されている。
日本でも中国大陸からのPM2.5の飛来が問題となることがあるが、チェンマイの場合は発生源が極めて近く、かつ山に囲まれた地形のために汚染物質が滞留しやすいという特性がある。
タイ北部に長期滞在する場合は、3〜4月の山火事シーズンのPM2.5情報を事前に確認し、N95マスクや空気清浄機の準備が推奨される。