アヌティン首相は3月28日午前10時から正午にかけて、官邸のサンティマイトリー館で記者会見を開いた。中東危機が発生してから丸1か月を節目として、タイ経済への影響と政府の対応策を詳しく説明するものだ。会見には首相のほかエクニティ副首相兼財務相、商務相、エネルギー相、外務相、さらに国家経済社会開発委員会(NESDC)のダヌチャー事務局長が出席し、経済閣僚チームが勢揃いする大型会見となった。
中東危機は2026年2月末から3月初旬にかけて急速に悪化した。イランとイスラエルの軍事衝突が拡大し、ホルムズ海峡の安全な航行が脅かされる事態となった。タイは原油輸入の多くをサウジアラビアやUAEなどペルシャ湾岸諸国に依存しており、海峡の緊張は即座に国内の燃料供給と価格に影響した。石油基金が急速に赤字を拡大し、政府はガソリン・ディーゼルへの補助継続と燃料供給の確保を最優先課題として取り組んできた。
1か月後の会見では、政府のこれまでの対応を整理し、今後の見通しを示す内容が発表された。エネルギー価格の管理と安定供給、物価・生活費対策、そして中期的なエネルギー安全保障のための新たな施策についても言及が行われた。会見はNBT(国営放送)のほか政府のFacebookページでライブ配信され、多くの国民がリアルタイムで視聴した。
アヌティン政権にとってこの会見は、危機対応の実績を国民に示す重要な機会でもあった。首相就任から1年あまりで突発的なエネルギー危機に直面したアヌティン首相は、閣僚チームを前面に立てながら政府の一体的な対応を演出した形だ。一方で野党側は「対策が遅く効果が不十分」と批判を続けており、会見内容への評価は与野党で大きく割れた。
タイ国民の間では燃料高騰による生活費上昇への不満が高まっており、政府の情報公開と説明責任への期待も高まっている。今後の価格動向と経済対策の実効性が焦点となる。