タイ特別捜査局(DSI)が3月26日、タンマカーイ寺の元住職タンマチャヨー師(俗名チャイブン・スッティポン)のマネーロンダリング事件の捜査を打ち切ったと発表した。理由は公訴時効の満了である。
DSIによると、最高検察庁の特別案件部の担当検察官が、共謀マネーロンダリング、マネーロンダリング実行、盗品受領の3つの容疑について時効が満了したと認定し、起訴中止を命じた。事件はDSI特別案件第27/2559号として2016年から捜査が続いてきたもので、タムマヌーン・アタチョット氏らによる告発が捜査の発端だった。
タンマカーイ寺は、バンコク近郊のパトゥムターニー県に巨大な仏塔と本堂を構える、タイで最も知名度の高い仏教寺院の一つだ。タンマチャヨー師は教団の象徴として長年信者を集めてきた人物で、ある破綻した信用組合からの不正資金が同師や寺の口座を経由したのではないかという疑惑を中心に、捜査は進められてきた。逮捕状が出されたあとも本人の身柄は確保できず、寺の境内で支持者と外の警察が長く膠着するという、宗教と国家の関係を考えさせる場面が何度も繰り返されてきた経緯がある。
引っかかるのは、結末が「時効」になったという事実そのものだ。2016年に特別案件として正式に立件されてから10年。途中で本人の身柄が押さえられず、捜査が止まったわけではないが結局時計の方が先に止まった、ということになる。
タイ社会のなかでタンマカーイ寺事件は、僧侶や寺院をどこまで世俗の法で裁けるか、という古典的な問いを長く照らし続けてきたテーマだった。今回の幕引きは、その問いに対して「裁ききれなかった」という形の答えになる。続報があるとすれば、盗品受領で別の関係者にどう手が及ぶかという周辺案件のほうだろう。