チェンマイがまた、季節の煙に呑み込まれている。タイラットが伝えた報道によると、市内全域がPM2.5を多く含む煙霧に覆われ、住民からは目の痛み、かゆみ、発疹といった訴えが続出。8歳の女児が鼻血を出したケースも報告されている。山火事の発生が今シーズンの空気の悪さを押し上げているという。
チェンマイ周辺の3〜4月の風景といえば、ほぼ毎年この煙だ。山あいの谷地形が煙を逃さず、市街地に沈殿する。背景にあるのは森林火災と、農地・山林での野焼き。乾季の終わりに次の作付けの準備で土地を焼き払う伝統的な農法と、火が手を離れて広がる森林火災が同じ時期に重なる。「焼き霧シーズン」(หมอกควัน、モーククワン)と呼ばれる現象だ。
驚かされるのは、これが毎年の話で、しかも毎年「今季最悪」が更新されているように感じることだ。タイ政府も野焼き禁止令を出しているのだが、山岳地帯の小規模農家にとっては、野焼き以外の作付け準備に切り替えるためのコストや技術支援が追いついていない。禁止する側と禁止される側、どちらの事情も分かるだけに、毎年同じ報道を見ている感覚になる。
健康面では、PM2.5の急騰時期に子どもや高齢者、呼吸器疾患のある人がいちばん割を食う。8歳児の鼻血というのも、粘膜が連日のダメージを受けた結果として珍しい話ではない。チェンマイの呼吸器科では、毎年この季節になると気管支炎や喘息の悪化で来院する患者が増えるのが定番化している。
チェンマイを春先に訪れる予定がある人は、IQAirなどリアルタイムでAQIを見られるアプリの導入と、N95クラスのマスク持参はほぼ必須と考えていい。観光名所は変わらず魅力的だが、空気だけはここ数年、誰の努力でもどうにもならない部分が残り続けている。