アユタヤ県で営業する「10バーツ食堂」が、燃料危機によるコスト上昇にもかかわらず、おかず付きご飯を10バーツ(約40円)のまま提供し続けている。ご飯はおかわり自由だ。
店主は「原材料費も燃料費も上がっているが、この店に来るのは毎日の食費を切り詰めている人たちだ。値上げすれば、その人たちの食事が減る」と話す。利益はほぼ出ない状態だが、地域の支えになることを優先している。
タイにはこうした超低価格の食堂が各地に点在する。日本では考えにくい価格帯だが、タイの地方では日雇い労働者や高齢者にとって欠かせない存在だ。食材は市場からの仕入れに加え、近隣の農家や支援者からの寄付で賄われることも多い。
燃料危機は食品価格にも波及し始めている。物流コストの上昇は食材の仕入れ値に直結する。政府は71品目の価格統制を発表したが、末端の小規模飲食店への支援はほとんど手が届いていない。
この食堂のように、危機の中でも「誰かのために」価格を据え置く商売は、タイの庶民文化の一面を映している。華やかな観光地の裏側で、こうした日常の助け合いが社会を支えている。