在タイ米国大使館は2026年3月、中東の軍事情勢の緊迫化を受け、タイ在住の米国人市民に向けて改めて安全への警戒を呼びかける声明を発表した。米国はイスラエルへの支援を続けていることから、中東関与国を狙ったテロ報復の可能性があり、在外米国人がその標的となりうるという懸念に基づく措置だ。
大使館は具体的に「公共の混雑した場所、官庁街、軍事・警察施設の周辺には近づかないよう」助言した。また「異常な動きや不審な荷物を見かけた場合は当局に通報する」「緊急時の連絡方法(STEP登録、緊急電話番号など)を事前に確認しておく」よう求めた。タイにはアメリカ人が数万人居住しており、バンコク・チェンマイ・パタヤ・プーケットなどに集中する。
バンコクは東南アジアのハブ都市として、大使館・国際機関・多国籍企業が集中する。テロリスクという観点では、過去にバンコクやチェンマイで爆発物事件が発生したことがある。2015年のバンコク中心部エラワン廟爆破事件では外国人を含む20人が死亡しており、当局は中東・中央アジア関係者との関連を捜査した。
タイ政府は自国の外交スタンスとして、中東紛争については明確な立場を示さず「中立」を維持している。イスラム教を信仰するタイ深南部の住民や、イスラム諸国からの出稼ぎ・観光客との関係を考慮してのことだ。ただし、タイを訪問する外国人が中東紛争の余波として危険に晒されることは政府も望まない。
外国人の安全確保はタイの観光収入と外国人投資に直結する。米国大使館の声明は在タイ米国人へのものだが、日本を含む他国の大使館も同様の警告を出しており、タイを拠点とする外国人全般にとって無視できない情報だ。タイ警察庁は外国人集中地区のパトロール強化を実施している。