サウジアラビアが2026年5月分(4月納品分)に続いて6月分のアジア向け原油供給も削減する方針を明らかにした。米国・イスラエルとイランの紛争によるホルムズ海峡の不安定化を背景に、原油の供給リスクが高まる中でのOPEC+内での生産調整だ。タイを含むアジア向け輸入国への影響が長期化する可能性が出ている。
削減の背景
サウジアラムコはOPEC+の生産枠組みの中で、アジア向け公式販売価格(OSP)と供給量を毎月調整している。2026年3月からの中東紛争激化でホルムズ海峡を通過するタンカーへのリスクが高まり、一部保険会社が付保を制限または保険料を引き上げた。これが実効的な輸送コストを押し上げ、需要を抑制させる側面もある。
サウジは4月に続き5月も同様の削減を実施することで、市場への過剰供給を防ぎつつ価格の維持を図る姿勢を示した。タイラットによると、この決定はホルムズ海峡経由のルートの流通が引き続き引き締まっていることへの対応という側面がある。
タイへの影響
タイの原油輸入の約70%は中東産で、その大半がホルムズ海峡を経由する。サウジからの供給削減が続けば、タイの精製所は代替調達先(西アフリカ、米国、北海など)からの調達を増やすことを余儀なくされるが、輸送距離が長くコストが上昇する。
精製コストの増加は国内の石油製品価格に転嫁される。タイが2026年3月以降経験している燃料高騰の一因でもあり、長期的に供給削減が続けばさらなる価格上昇圧力となる。
国際原油市場の動向
2026年前半の原油価格はブレント原油で1バレル85〜100ドルの範囲で推移していた。中東紛争と供給削減が重なれば100ドル超えも視野に入るが、トランプ政権がイランへの軍事攻撃を延期した局面では一時的に急落する場面もあった。
OPEC+は2024年以降、増産を段階的に進める計画だったが、地政学的リスクと価格維持の観点から方針を度々変更している。市場の不確実性が高い状況が続いており、アジアの輸入国は受動的に価格を受け取るほかない構造上の弱さを抱えている。
タイは中長期的なエネルギー安全保障として、再生可能エネルギーの拡大と国家石油備蓄制度の整備を検討しているが、2026年時点では大きな政策変化はまだ実現していない。