スコータイ県サワンカローク郡のガソリンスタンドで2026年3月、開店前からディーゼルを携行缶に入れようとする住民が長蛇の列を作った。スワンカローク警察の交通担当が現場整理に当たる事態となった。中東情勢の緊迫化を受けてタイ全国で燃料不足と価格高騰が続く中、スコータイを含む北部の複数県でも同様の光景が広がっている。
スコータイ県は北部農業地帯で、農業機械・漁船・農産物輸送に使うディーゼルは農家の生活に直結する。価格が1リットル33バーツを超えたところで「もっと値上がりするかもしれない」という不安から先買いしようとする動きが起きた。スタンド側は「販売量に制限を設けていない」としながらも、ディーゼルが数時間で売り切れる状況が続いた。
タイ全国での燃料不足・価格高騰は2026年3月下旬から顕著になり、チェンマイ・ピサヌローク・スコータイなど北部を皮切りに、中部・東北部でも長蛇の列が報告された。中東の紛争によるホルムズ海峡通航への懸念と、サウジアラビアのアジア向け供給削減がその主因だ。
タイ政府エネルギー規制委員会(ERC)と石油燃料局は在庫確認と補充指示を出しているが、タンクローリーの配送ルートと供給量の調整に数日かかることが多く、地方部では「今日は売り切れ」が繰り返された。首相は買い占め・横流しを禁じる緊急指示を出し、ISOCに監視強化を命じた。
日本では石油備蓄と精製設備が充実しており、緊急時でもガソリン・軽油の供給は基本的に維持される。タイでは戦略的備蓄の規模が相対的に小さく、有事には中東情勢の変化が直接価格と供給量に響く構造的な脆弱性がある。タイ政府は中長期的な再生可能エネルギー比率の向上と、備蓄施設の拡充を急ぐ方針だ。