首相が「市場に任せる」と発言した翌日の2026年3月下旬、タイ全国のガソリンスタンドにディーゼル需要が殺到した。多くのスタンドが1日以内に売り切れとなり、農家や業者が右往左往する事態となった。
「市場任せ」発言の衝撃
アヌティン首相が「ディーゼル価格は市場原理で決まる。これ以上抑制することは困難だ」と公言した直後、国民の間に「燃料がさらに高くなる」「今のうちに大量に買っておこう」という心理が広まった。
この「パニック買い(panic buying)」は一斉に起きたため、通常の配給ペースでは需要に対応できなくなった。スタンドによっては開店直後に在庫が底をつき、午前中だけで販売を停止するところも出た。
農家・業者への直撃
最も打撃を受けたのは農業用に大量のディーゼルを必要とする農家と、建設・物流業者だ。田植えや灌漑ポンプ稼働に毎日数十〜数百リットルを必要とする農家は、スタンドが閉まれば作業が止まる。
一部の業者は複数のスタンドをハシゴして少量ずつ買い集め、業務を維持しようとした。スタンドが1人あたりの購入量を制限する措置を取ったことで、さらに行列が長くなった。
パニック買いの連鎖
社会心理学では、「希少性の認知」が需要を実態以上に膨らませるとされる。今回の場合、実際の国内供給量には余裕があったが、「品切れになるかもしれない」という認知が先行して買い占めを引き起こした。
政府は「供給は十分だ。落ち着いて対応を待ってほしい」と呼びかけたが、効果は限定的だった。