ミャンマー軍事政権は2026年3月中旬、バーコードとQRコードを使って国民の燃料購入量を制限する制度を導入した。BloombergとStraits Timesが報じた。事実上の燃料配給制で、中東情勢を発端とした世界的な燃料危機がミャンマーでより深刻な形で表れている。
制度の仕組み
車両の登録証に含まれるバーコード情報からQRコードが生成され、そのコードで個人や車両ごとの燃料購入履歴を管理する。エンジンサイズによって1週間に購入できる回数が1〜2回に制限される仕組みだ。ヤンゴンとネピドーの大型スタンドでは3月12日からバーコードシステムの試験運用が始まっていた。
長距離移動の運転手は、前回給油時の領収書を提示することで幹線道路沿いのスタンドでも給油できる例外措置が設けられた。
ミャンマーの燃料危機の深刻さ
タイでも燃料危機が深刻だが、ミャンマーはその比ではない。軍事政権下での外貨不足、国際制裁による取引制限、インフラの老朽化が重なり、燃料輸入が滞っている。ヤンゴンを含む主要都市でスタンドの行列が1〜2km以上になるケースが報告され、燃料が手に入らずに閉鎖するスタンドも出た。
ミャンマー軍事政権はドル不足への対応として、中央銀行が9,600万ドル(約30億バーツ相当)を市場レートより低い為替レートで石油会社に供給し、輸入コストを支援した。政府は「燃料備蓄は50日分ある」と公表したが、民間の実態とは乖離があるとみられる。
また、ジェット燃料の不足から複数の国内航空会社が国内線の一時運休に追い込まれた。
省エネ政策との連動
ミャンマー政府は燃料不足と同時に、省エネ措置として政府機関職員に毎週水曜日の在宅勤務を義務づけた。公的機関の通勤車両を減らすことで、燃料消費を抑える狙いだ。インドネシアも同時期にWFH(在宅勤務)政策を検討していたことが報じられており、ASEAN全体でエネルギー需要抑制の動きが広がっていた。
タイとの比較
タイは市場価格の上昇と石油基金の枯渇が中心的な問題で、スタンドでの在庫枯渇は一時的・地域的なものにとどまった。政府の介入も「上限価格の設定・解除」「基金の補充」「密輸の取り締まり」が中心で、QRコードによる購入制限という強制的な配給制には至らなかった。
日本では石油配給制は第二次世界大戦中が最後で、平時にQRコードで燃料購入を管理するという仕組みは現代の先進国では前例がない。ミャンマーの事例は、燃料危機が「価格問題」を超えて「物理的な供給制限」へと深化した場合に何が起きるかを示している。