ペッチャブーン県の主要農産物の一つであるキャベツが2026年3月、燃料危機による輸送困難で市場に出せない状況となり、産地価格が暴落した。キャベツは冷涼な山岳地帯で栽培されるため、中部・バンコク方面への輸送はトラックに頼っているが、ディーゼルの高騰と不足で運送業者が配送を断ったり、輸送費を大幅に値上げするケースが相次いだ。
ペッチャブーンはタイ中北部の山岳地帯で、キャベツ・パプリカ・苺などの高原野菜の産地として知られる。標高1200〜1500メートル付近のコーコー・ナームナウ地区が主要産地で、年間を通じて安定した品質の野菜を供給している。農家の多くは中小規模で、自家トラックを持たず農協や運送業者に依存している。
今回の問題は「採れても運べない」という典型的な燃料危機波及パターンだ。運送業者がコスト増から配送を拒否したり、積み込み価格が産地価格を上回るケースも出た。農家は「運べないなら畑で捨てるしかない」という苦境に立たされた。
タイ政府農業協同組合省は、農産物の産地から直接消費者・スーパーへ届ける「農家ダイレクト」スキームを緊急展開した。バンコク都の公設市場や大手スーパーと産地農協を直接結ぶルートを設置し、中間業者と輸送費のダブルコストを一部回避した。しかし対応が間に合わず廃棄を余儀なくされた農家は少なくない。
日本でも2011年の東日本大震災後に物流寸断で農産物の産地廃棄が起きたが、農業インフラの強靭化と分散輸送体制の整備がその後進んだ。タイでも今回の危機を契機に、農産物輸送の脆弱性の見直しと農家向けの緊急物流支援体制の構築が求められている。