日本政府は2026年3月26日から国家石油備蓄(IEA協調放出の一環)を市場に放出すると発表した。放出の背景には、米国・イスラエルとイランの軍事衝突が引き起こしたホルムズ海峡経由の原油供給リスクがある。アジアでは先にタイが独自の備蓄放出に動いており、日本の決定はアジア全域での協調対応の流れを示すものとなった。
ホルムズ海峡はペルシャ湾からオマーン湾に抜ける全幅約50〜90キロの水路で、世界の原油輸送量の約20〜25%が通過する。この海峡が封鎖または危険視されると、原油の供給不足と価格高騰が即座に発生する。イランは過去の緊張局面でも封鎖を示唆してきた。
国際エネルギー機関(IEA)は加盟国に対して90日分以上の備蓄保有を義務付けており、有事には協調放出を決定できる。今回の放出はIEA主導の協調措置ではなく、タイ・日本それぞれが独自に判断したものだが、タイミングが近かったため「アジアの協調」として注目された。
タイの石油備蓄は国家エネルギー政策委員会(NEPC)が管理し、一定量の原油・石油製品が戦略備蓄として保有されている。2026年3月には国内のディーゼル不足が深刻化し、ガソリンスタンドに長蛇の列ができる事態が全国各地で発生していたため、備蓄放出は国内消費者の安心感につながった。
日本では備蓄放出が輸入石油の価格抑制に寄与するとともに、ガソリン・灯油の価格補助と組み合わせて家計負担を緩和する効果が期待された。日本のエネルギー自給率は15%程度(電力除く)で、原油価格の変動は円安の影響とあわせて輸入インフレの主要因となる。タイも原油輸入依存度が高く、日本との立場は近い。