イラン政府は、タイの船舶がホルムズ海峡を安全に通過できることを保証すると約束した。バンコクのイラン大使館が3月24日に声明を発表し、タイの商船がすでに海峡を無事通過したことを確認した上で、「タイとの友情を忘れない」と述べた。
この安全保証は、タイ・イラン・オマーンの3か国間の緊密な連絡調整を経て実現したとされている。タイのバンチャック社のタンカーもオマーンおよびイランとの交渉を経て海峡を通過しており、外交的な成果として評価されている。
ホルムズ海峡は世界の石油輸送量の約20%が通過する戦略的要衝だ。イランとイスラエルの軍事的緊張が高まった2026年3月以降、同海峡を通る船舶への安全保証が揺らぎ、保険料の急騰と輸送コストの上昇を招いていた。タイのタンカー「マユリー・ナーリー号」がホルムズ海峡付近で攻撃を受けたという報道もあり、タイ政府は外交ルートを通じてイラン側との協議を急いでいた経緯がある。
タイはイランと歴史的に中立的な関係を維持しており、紛争の当事国ではないという立場が今回の外交交渉で功を奏した可能性がある。タイとイランの2国間貿易額は大きくないが、タイが中東から輸入する原油・精製石油製品の輸送ルートとしてホルムズ海峡は不可欠だ。タイの石油輸入の大半がサウジアラビア、UAE、クウェートなどのペルシャ湾岸諸国からであり、海峡封鎖は即座に燃料価格の急騰につながる構造がある。
ただし外交的な約束の実効性については慎重な見方も残る。戦況が流動的な中で「攻撃しない」という保証がどこまで担保されるかは不透明であり、タイ政府としても複数の輸送ルートの確保と代替供給源の開拓を並行して進める必要がある。日本でも天然ガスやLNGの中東依存度が高く、ホルムズ情勢はアジア全体のエネルギー安全保障に直結する問題だ。
タイはASEAN諸国の中でも外交的なバランス外交に長けた国として知られ、今回の安全保証獲得は燃料危機が深刻化する局面での外交実績として国内でも評価されている。
