タイで宝くじに5回連続で当選したという男性が、自分の幸運をもたらしたと信じる「クマーントーン(กุมารทองเจ้าสัวเฮง)」の像にお礼参りをした様子がメディアに報じられた。参拝後には「次の回のラッキーナンバーもください」とお願いしていったという。タイならではの霊的文化と宝くじ文化が交わる光景だ。
クマーントーンとは何か
クマーントーン(กุมารทอง)は「黄金の子」を意味する精霊信仰の対象で、子どもの形をした守護霊の像だ。タイの民間信仰(ピー信仰)の一つで、お守りとして購入し家庭や店内に祀ることで、幸運・富・事業繁盛をもたらすと信じられている。
歴史的には、クマーントーンはタイの文学「クン・チャン・クン・ペーン」に登場する呪術的な存在が起源とされる。現代では可愛らしい子どもの像として商品化されており、寺院やお守り市場、オンラインショップで数百バーツから数万バーツまで幅広い価格で販売されている。
毎日食べ物や飲み物を供え、話しかけて「お願い」をする熱心な信者も多い。菓子・ジュース・ご飯などの定番の供物のほか、お気に入りの食べ物を聞いて供える人もいる。
タイの宝くじ文化
タイの政府発行宝くじ(สลากกินแบ่งรัฐบาล)は1枚80バーツ(約350円)で、毎月1日と16日に抽選が行われる。1等の当選金額は最大600万バーツ(約2,500万円)で、タイ人にとって夢のくじだ。
タイ人の宝くじへの執着は日本とは比べものにならない熱量がある。当選者の証言、夢で見た数字、事故や霊に関係する番号(「幸運の番号」)が口コミで広まると、その番号の入った宝くじが市場で1枚300〜500バーツ以上で取引されることも珍しくない。
「5回連続当選」は統計的には極めて稀な出来事だが、タイでは「守護霊に頼んだから」という解釈が広く受け入れられる。こうした体験談はSNSで急速に広まり、関連するお守りの需要が急増するパターンが繰り返されている。
参拝スポットとしての霊的場所
クマーントーンが祀られている有名な場所には、バンコクのプラ・カネット廟(ガネーシャ像)やルアンポー・ドゥアイの縁起物を扱う寺院などがある。週末になると宝くじの当選や事業繁盛を願う参拝者が長蛇の列をなすことも多い。
タイではこうした霊的な実践が日常生活の一部として浸透しており、「非合理だ」と批判されることは少ない。宗教的なものと世俗的な欲望(お金への願望)が違和感なく共存しているのが、タイの宗教観の特徴だ。