5月21日午前10時30分、ノンカイ県のラオス・タイ友好橋で、タイ国民307人(男女)がラオス側からタイ側へ引き渡された。ラオス・ヴィエンチャン首都警察当局からの送還で、タイ側は警察庁第4地方警察、ノンカイ県警、第4移民局、ノンカイ県の治安担当機関、社会開発・人間安全保障省ノンカイ事務所が合同で受け取った。指揮を執ったのは第4地方警察副司令官ノパクサオ・ソマナス少将である。
受取後、307人はノンカイ県の義勇兵中隊施設に集められ、本格的な選別審査に入った。隣で受け取りに立ち会ったのは、ノンカイ県警副本部長スラキット・クォンクルア大佐と、第4移民局副本部長クリッサダーゴーン・クリンケーソン大佐。
引っかかったのは、人数の多さである。これまでの送還事案でも数十人単位は珍しくなかったけれど、一度に307人という規模はそうそう見ない。受け取った中には、ラオス側で実際にスキャマー(電話・オンライン詐欺)を働いていた側の人間と、そこに強制的に連れ込まれて働かされていた側の人間の両方が、まだ未仕分けで混ざっている。それを順番に切り分けていく作業が、これから義勇兵中隊で始まる。
5つの機関が並んで聴取する
選別の枠組みはなかなか細かい。捜査部門、サイバー警察、求人センター、県労働部、そして社会開発・人間安全保障省ノンカイ事務所の5機関が、それぞれの観点から一人ずつ聴取する。
捜査部門は逮捕令状の有無や刑事事案の関与を確認する役回り。サイバー警察はスキャマー詐欺の実行者かどうかを掘り下げる。求人センターと県労働部は、海外就労情報や雇用契約の実態を確認する。社会開発・人間安全保障省は、人身売買の被害者と認定すべき人物かどうかを判断する。
聴取は定められたフォームに沿って行われる。終わったところから、逮捕令状が出ている人物は刑事訴追へ、被害認定された人物は社会保護施設に収容されるか、帰郷支援の枠に振り分けられる。被害者と詐欺団員を一度に受け取ってから振り分ける、この段取りそのものが、ここ数年で出来上がってきた仕組みなのだろう。
国境地帯のスキャマー、ここ数年の流れ
ラオス・タイ国境地帯のスキャマー拠点は、ここ数年タイ側で話題が絶えない領域である。ミャンマー国境のミャワディ、カンボジア側のシハヌークビル、ラオス側のメコン川沿い。同じ地図上で、似た構図の拠点が、国境を越えながら次々と立ち上がってきた。
タイ側から見れば、自国民が「コールセンター職、月給5万から10万バーツ」といった求人で誘い込まれ、現地でパスポートを取り上げられ、自由を制限されたまま詐欺の実行を強要される。拒否すれば暴力、ノルマ未達成で罰金。逃げ出した、あるいは現地当局の摘発で解放された人々が、こうやって国境を渡って戻ってくる。
タイとラオスの当局は近年、こうした拠点への対応で連携を深めている。今回の307人送還は、その連携の中でこれまでで規模の大きい一件にあたる。
気になるのは、307人の中の内訳である。詐欺団側と被害者側の比率がどう出るかで、ラオス側のスキャマー拠点が「縮小に向かっているのか、まだ拡大の余地があるのか」が見えてくるはずだ。続報は、選別審査の結果が公表されるタイミングで追いたい。

