タイ厚生省が5月20日付の王室公報で、コンゴ民主共和国(DRC)とウガンダを「危険感染症地区」に指定した。施行は5月21日。対象はエボラウイルス感染症で、タイ国内での発生は確認されていないものの、両国からの入国者を対象とした検疫・監視を一段引き上げる構えだ。
発端はDRC・イトゥリ州の流行である。5月16日時点で確定症例8件、疑い症例246件、死亡疑い80件。ウガンダの首都カンパラでもDRCからの渡航者で確定症例が2件出ている。WHOのテドロス事務局長は5月17日、これを「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」と認定した。タイ厚生省の今回の告示は、その2日後の動きということになる。
今回のウイルスはエボラのなかでもブンディブギョウ株と呼ばれるタイプで、致死率は25〜36%とされる。よく知られているザイール株(50〜90%)よりはやや低いものの、有効な承認薬は限定的で、対症療法が中心だ。既存ワクチンのrVSV-ZEBOVもザイール株向けで、ブンディブギョウ株への効きは研究段階。潜伏期間は2〜21日、平均で8〜10日。感染は患者の血液や吐瀉物といった体液との直接接触、あるいはコウモリや霊長類との接触で起きる。
タイには現時点でDRC・ウガンダからの直行便はなく、流入経路があるとすればエチオピアや中東経由の乗り継ぎになる。空港の検疫や発熱者の対応プロトコルが回るかは、結局のところこういう「直行便ではない国」の話をどこまで真面目に運用できるかにかかっている。厚生省は問い合わせ窓口として番号1422を案内している。
引っかかったのは、PHEIC宣言から2日でタイがここまで踏み込んだ点だ。コロナの初動で批判を浴びた経験が、判断の速さにつながっているのかもしれない。アフリカ方面に出張予定がある人や、DRC・ウガンダ滞在歴のある関係者が周囲にいる場合は、帰国後3週間の体調と、1422の存在だけ頭の隅に置いておきたい。