タイ国家汚職対策委員会(NACC、ป.ป.ช.)は5月18日、インラック・チナワット政権下で商務大臣を務めたブンソン・テリヤピロム氏について「不当蓄財」と認定したと発表した。スラポン・インタラタワン事務局長(NACC事務局報道官)が会見で明らかにしたもので、認定された蓄財額は合計1億702万830バーツ(約4億9,000万円)にのぼる。NACCは最高裁特別部(政治公職者刑事部)に財産没収を申請する方針だ。
NACCの説明によると、対象期間は2012年1月18日から2013年6月30日までの約1年5ヶ月。ブンソン氏は商務大臣として国家米政策委員会(NRC)副議長と米放出小委員長を兼ね、コメ担保プログラムの実務上の中心にいた時期だ。この間の正規収入は給与と大臣在任手当を合わせて208万3,320バーツ。妻の土地賃貸収入は年20万バーツで、子は学業中で収入なし、というのが世帯の収入の全体像だ。これに対して1億バーツを超える財産が積み上がっていた、というのが今回の認定の骨子になる。
ブンソン氏はすでに2017年8月、いわゆるG2G(政府間)米取引偽装事件で最高裁特別部から42年の懲役判決を受けて服役している。中国側を装った民間企業との架空契約を商務大臣として承認し、競争入札を経ずにコメを安価で売却した、というのがこの事件の中身だった。今回はそこに財産面から追加でメスを入れるかたちで、判決から約9年が経ったいまも案件が動き続けている、ということになる。
ここでわざわざ蒸し返される背景には、インラック政権期のコメ担保プログラムをめぐる長い清算の流れがある。市場価格を大きく上回る価格で農家からコメを買い上げた政策で、政府は大量の在庫を抱えたまま輸出戦略が崩れ、最終的に膨大な財政負担と多数の汚職が露呈した。インラック元首相自身も2017年に過失で5年の懲役判決を受けており、ブンソン氏のラインはその実務面の責任を負うかたちで断罪されてきた経緯がある。
興味深いのは、9年越しでもなお案件が止まっていない、というところだ。財産没収の手続きはこれから最高裁の審理を経ていく。一連の流れは、タイの政治と司法のリズムの違いを、そのまま映し出しているようにも見える。

