タイ東北部ブリーラム県の村で5月14日、野生象を村から追い払う活動を率いていた66歳のリーダー、ウィーラ・ラチャウォンさんが象に襲われて死亡した。ウィーラさんはドンヤイ野生象監視ネットワーク委員長として地元のために働いていた人物で、皮肉にも自身が守ろうとしていた村の中で命を落とす結果になった。タイの森林地帯で続く「人と象の衝突」問題が、地域コミュニティの中核的存在を奪う形で表面化したニュースだ。
ドンヤイ森周辺で住民が立ち向かう日々
ブリーラム県のドンヤイ森周辺地域は、長年にわたり野生象が村に出没し、農作物を荒らしたり住民を危険にさらしたりする問題が続いている。地元住民は「ドンヤイ野生象監視ネットワーク」を組織し、象を森に追い返す活動を続けてきた。ウィーラ・ラチャウォンさんは66歳でこのネットワークの委員長を務め、地域住民から信頼を集める存在だった。
5月14日、ウィーラ会長が村内で象に襲われる
khaosod Englishの報道によると、事件はブリーラム県内の村で発生。ウィーラさんが象を村から追い払う活動の最中、突然襲撃を受けた。地元住民の証言として伝えられている。ドンヤイ森に最も近い住民集落の中で起きた事案で、象が森を出て住宅地まで侵入する頻度の高さが、改めて浮き彫りになった。
「象が森を溢れて出てくる、対応機関がない」
地元住民の間では、象が森から出てくる頻度が増え続けているのに、それに対応する政府機関の対応が十分ではない、との不満が長年続いてきた。タイ国立公園野生動物植物保護局(DNP)が制度上の管理を担うが、現場では監視ネットワークのような住民組織が事実上のパトロールを担っている。今回のケースは、その活動の最前線にいた人物が命を落としたことで、構造的な問題への注目を集めるきっかけとなる。
タイ全土の「人と象の衝突」事件
ドンヤイ森だけでなく、カオヤイ国立公園周辺、カンチャナブリー、プラチンブリー、ペッチャブーンなどタイ各地で、人と象の衝突は毎年複数件発生している。象は保護動物だが、農作物を荒らす際の駆除は法的に難しく、住民は防御策(音響、ライト、トーチ)で対応するしかない現実がある。象が攻撃に転じた場合、住民が逃げ場を失う構図はどこでも同じだ。
在タイ日本人の旅行・滞在への含意
タイ国内の自然観光地、特にカオヤイ国立公園・ドンヤイ森・カオキッチャクート等を訪れる際は、ガイドの注意事項を必ず守り、夜間の単独行動を避けることが基本だ。地元住民が日常的に直面しているリスクを、観光客がたまたま遭遇する場面もある。被害者の冥福を祈るとともに、現地行政の人と象の共存政策が今後どう動くかにも注目したい。