バンコク・サパーンプラ・チャルンクルン58号線地区で5月11日、ゴミ収集作業中の清掃員が、透明なゴミ袋の中から胎齢6か月相当の男児の遺体を発見し、ヤーンナワー警察署に届け出る事件があった。発見者の50歳ドライバー、チャイナロン・カティサート氏は「最初は人形だと思ったが、引き出してみると胎盤と臍帯がついていた。怖くて部下と一緒に逃げ出してから通報した」と証言。タイ警察庁科学捜査部、警察病院法医学部、救助隊ルアンカタンユー慈善基金が現場へ急行して捜査を開始した。
事件の経緯は次の通り。5月11日朝、バンコク・ヤーンナワー区サパーンプラ・チャルンクルン58号線で、ゴミ収集作業を担当していたチャイナロンドライバー(50歳)が、ゴミ箱を引きずって移動中に1つのゴミ箱を空にし、内容物のプラスチックボトル選別作業を開始。複数のゴミ袋を破って中身を確認していたところ、透明袋から「人形のような物体」が落下した。引き出すと、それは胎盤と臍帯付きの男児遺体だった。
ドライバーと部下は強い精神的衝撃を受け、現場から走って逃げ出した後に、落ち着いてから警察に通報した。発見者は「長年この仕事をしているが、こんな経験は初めて」と取材に語っている。
警察対応は迅速だった。ヤーンナワー警察署のラート・チャイ警部補(พ.ต.ต.เลิศชาย ผือลองชัย สว.สอบสวน)が通報を受け、(A)タイ警察庁科学捜査部(กองพิสูจน์หลักฐาน)、(B)警察病院法医学部(แพทย์นิติเวชโรงพยาบาลตำรวจ)、(C)救助隊ルアンカタンユー慈善基金(มูลนิธิร่วมกตัญญู)、を現場へ派遣。透明ゴミ袋から発見された男児遺体は胎盤・臍帯付きの状態で、胎齢6か月相当と確認された。
ゴミ収集車(緑色、ナンバー67-9755バンコク)の運行ルートから、遺体の遺棄場所の特定が捜査の最初の焦点となる。チャイナロン氏は「ソイ・チャルンクルン58号線内のゴミ箱集積所で複数のゴミ箱を回収したが、どのゴミ箱から出たかは特定できない」と説明。警察は周辺のCCTV解析と、ゴミ箱使用者の聞き込み調査を並行で進める。
タイ社会の新生児・胎児遺棄問題は構造的に深刻だ。タイ社会開発・人間安全保障省の統計によれば、新生児・胎児の遺棄事案は年間数百件規模で発生しており、(A)若年妊娠の社会的圧力、(B)違法中絶アクセスの困難、(C)医療費負担、(D)家族・パートナーの不支援、(E)養子縁組制度の認知不足、などが背景要因として指摘される。
タイの法的フレームワーク上、(i)胎齢12週以内の中絶は合法、(ii)強姦・近親相姦・胎児異常・母体危険時は中絶可能、(iii)胎齢12週超で違法中絶は刑事処罰対象、となる。胎齢6か月(24週相当)での遺棄は、(A)違法中絶後の遺棄、(B)出産直後の遺棄、(C)流産物の不適切処分、のいずれかの可能性があり、医療機関での適切な処理が義務化されているが、社会的スティグマで隠蔽されるケースが多い。
タイ仏教社会の文脈では、胎児・新生児の遺体は「処分」ではなく「葬儀」を行うべきものとされる。ルアンカタンユー慈善基金などの救助隊は、こうした遺体を引き取って仏式の追善供養を実施する伝統がある。今回の事件でも、警察捜査終了後は同基金が遺体の管理を担うとみられる。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、本事件は直接の被害には関係しないものの、(1)タイ社会の若年妊娠と養子縁組支援、(2)日本人女性の妊娠時の医療アクセス、(3)国際養子縁組の現状、などの社会的背景を理解する文脈材料となる。バンコクの日本人会・大使館・女性外国人サポート団体は、妊娠相談・養子縁組相談などの支援サービスを提供しており、知識として把握しておくと、日本人コミュニティ内での緊急時対応に役立つ。