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タイのアヌティン・チャルンビラクル首相とカンボジアのフン・マネット首相が2026年5月7日、フィリピン・セブで開催された三者会談で信頼の再構築と対話継続に合意した。仲介役を担ったのはフィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領で、2026年1月にASEAN議長国を引き継いだフィリピンが平和構築の役割を果たした形。第48回ASEAN首脳会議の開催に合わせ、Shangri-La Mactanで実施された。
セブのShangri-La Mactanで2026年5/7夜の三者会談
会談はフィリピン・セブのShangri-La Mactanリゾートで2026年5月7日(木)夜に行われた。第48回ASEAN首脳会議の本会議に先立つサイドラインミーティングとして設定され、タイ・カンボジア両国の関係改善を集中的に協議する場となった。
会場には3か国の首脳が同席し、マルコス大統領の進行で短時間の記者会見も実施された。マルコス大統領は冒頭で、フィリピンが「両国の二国間国境問題に関する建設的な対話のための意義ある場を提供するため」会談を準備したと説明した。
マルコス大統領が仲介、ASEAN枠組みの活用
フィリピンが仲介役を務めた背景には、ASEAN内でのフィリピンの中立的立場と、2026年1月から始まったASEAN議長国の責務がある。タイ・カンボジア二国間の対立を、ASEANという地域枠組みの中で建設的に処理することは、ASEAN全体の安定化と国際的信用維持にとって重要なテーマとなる。
マルコス大統領は会談の成果として、タイ・カンボジア両国が緊張をさらにエスカレートさせる行動を避け、開かれた対話を継続することで合意したと発表した。両首脳は、それぞれの外相に対話を継続するよう指示し、緊張回避・平和安定推進・国民福祉の保護という3つの目標を共有することを確認した。
MOU44撤回後の緊張と両首脳の合意事項
会談の背景には、2025年7月末から続くタイ・カンボジア国境地帯での緊張がある。2026年5月5日にはタイ内閣がMOU44(2001年締結の海洋境界線交渉枠組み合意覚書)の撤回を正式承認し、カンボジア外務省が「深い遺憾」を表明、両国関係はさらに緊張した。
アヌティン首相はMOU44撤回時に「UNCLOS枠組み」と「タイ・ファースト」アプローチへのシフトを表明していた。今回の三者会談では、こうした政策方針の転換を維持しつつ、二国間の対立をエスカレートさせない実務的な枠組みを再構築する方向性で両首脳が一致した。両国外相に率直な対話継続を指示する形で、外交チャネルを通じた紛争管理が続行される。
在タイ日本人と日系企業への影響
在タイ日本人駐在員と日系企業にとって、タイ・カンボジア関係の安定化は、両国を跨ぐサプライチェーン、観光ビジネス、国境地帯の物流、合弁事業の継続性に直接影響する。両国の対立がエスカレートすれば、国境通過の制限、ビザ・労働許可の運用変更、エネルギー資源開発の停滞などが想定される。
セブでの三者会談で対話継続が合意されたことは、当面の緊張回避という意味では好材料。ただし、MOU44撤回後の海洋境界線交渉、UNCLOS強制調停の手続き、両国外相レベルの実務協議の進展など、複数のトラックで動く外交プロセスを継続的にウォッチする必要がある。タイ拠点の日系製造業・商社にとって、サムットプラカン-カンボジア国境のラインを使う物流は当面、現状維持で推移する見通し。