(関連記事:タイBOIが6投資9580億B承認 TikTok 260億ドルでデータインフラ最大)
タイのアヌティン首相は5月6日、米格付け会社Moody'sがタイ国家信用見通しを「Negative」から「Stable」に上方修正したことを歓迎する声明を出した。Moody'sは4月21日付で評価変更を発表しており、米国関税ショックの下振れリスク緩和と国内投資の勢い改善が背景にある。タイのソブリン格付けはBaa1で据え置きとされた。
Moody'sの「Stable」上方修正と評価Baa1据え置き
Moody'sが2026年4月21日付で発表した格付けアクションは、タイのソブリン信用見通しを従来の「Negative」(否定的)から「Stable」(安定)に1段階引き上げる内容。長期外貨建て格付けの「Baa1」は据え置かれた。タイの「Negative」は2024年のソブリン財政リスク再評価で付与されたもので、今回の見直しで投資適格圏の中位として安定的見通しに戻った形。
格付け会社の見通しは、評価本体(Baa1)とは別の指標で、今後12〜18ヶ月の格上げ・格下げ方向を示す。「Stable」は当面の格付け変更可能性が低い状態で、投資家にとってはタイ国債やタイ企業の社債を保有するうえで重要なシグナルとなる。
米関税ショック緩和と国内投資の勢いが評価変更の背景
Moody'sが評価変更の理由として挙げたのは、第一に米国関税ショックからの下振れリスクが緩和したこと。トランプ政権下で重視されたタイへの相互関税圧力が、タイ商務省と米通商代表部(USTR)の交渉で一定の方向性を示し始めたことが評価を後押しした。
第二に国内投資の勢い改善。BOIが2026年に承認した外国直接投資が9000億バーツ規模に達し、データセンター、クリーンエネルギー、先端技術分野が中心。Moody'sはタイのGDP成長率を2026年1.5%、2027年2.2%と予測しており、強気とは言えないものの「成長軌道は維持される」との判断を示した。
タイの経済耐性についてMoody'sは、新興市場5ヵ国の中で経済的耐性が最も強いと評価。マクロ経済の安定性、投資家支援体制、行政の透明性と迅速性、インフラの堅牢性が評価項目に挙げられた。
アヌティン首相の反応と「5T戦略」
アヌティン首相は声明で、Moody'sの評価変更を「経済の安定と投資家信頼の反映」と位置付け、政府の経済運営方針への裏付けとなったとした。首相は同時に、政府が推進する「5T戦略」の継続を明言。Target(目標設定)、Transition(エネルギー転換)、Transform(経済改革)、Transparency(透明性)、Together(協調)の5本柱でタイ経済を中長期にわたって安定軌道に乗せる計画。
クリーンエネルギーへの転換、化石燃料依存度の低減も柱として強調された。Moody'sの評価変更が国内政策のフレームを後押しする好機と位置付けている。
在タイ日本人と日系企業への影響
格付け見通しの安定化は、タイで事業を行う日系企業にとって資金調達コストの押し下げ要因となる。タイ国債の利回りに連動するバーツ建て調達金利は、Moody'sの評価が改善する局面で安定推移しやすい。タイ拠点で社債発行や銀行借入を行う日系製造業、商社、金融機関にとっては、為替リスクと借入コストの両面で恩恵が期待できる。
在タイ日本人の生活面では、バーツ相場の急変リスクが当面緩和される可能性がある。日本円との為替で家計運営をする駐在員家庭にとって、タイ国家信用の安定はバーツの極端な弱体化を抑える効果が期待され、家計のヘッジ判断をしやすくなる。