タイの伝統的な王室典礼「王室開耕祭(พระราชพิธีพืชมงคลจรดพระนังคัลแรกนาขวัญ)」が、毎年5月にバンコク中心部のサナムルアン(王宮前広場)で開催される。2026年(仏暦2569年)は5月13日に予定されており、儀式後に白牛2頭が選ぶ供物で農業の年予測を行うというタイならではの儀式が見どころとなる。
サナムルアンは王宮(Grand Palace)の真向かいに広がる儀式用の広大な広場で、王室主催の重要行事の舞台となる場所である。当日はブラーフマン(バラモン)系の司祭たちが梵語(サンスクリット)で朗唱を行い、神女(เทพีคู่หาบทอง、celestial maidens)が祝福された米の種子を周囲に撒くという儀式が組まれている。タイ仏教と古代インド由来のバラモン教の典礼が混ざる、タイ独自の宗教観が表れる典礼である。
中心となる儀式は耕運の所作と白牛による予測である。「Phraya Raek Na(第一開耕卿)」と呼ばれるホスト役の高官が儀式用の犂(すき)を手に取り、白牛2頭に引かせる形で象徴的な耕作を行う。耕しが終わった後、白牛の前には7つの供物トレイが並べられる。中身は稲、トウモロコシ、豆類、ゴマ、草、水、米焼酎の7種類で、王立占星術師が白牛が何を食べるかを観察し、その年の農業の予兆を読み解く。
予測の解釈は伝統に従って体系化されている。穀物(稲・トウモロコシ・豆・ゴマ)を選べば豊作、草と水を選べば家畜の繁殖と適度な降雨、米焼酎を選べば外国との貿易が活発で経済が繁栄するとされる。タイは農業国でもあり、コメの輸出では世界有数の地位にあるため、王室開耕祭の予測は単なる典礼ではなく社会的に意味を持つ年中行事として受け止められている。
一般観衆の参加要素もある。儀式の行列が引き上げた後、多くの観衆、特に農業に従事する人々が広場に駆け込み、神女が撒いた稲の種子を一握りずつ持ち帰る。祝福された種子には霊的なご利益があると信じられており、自分の田や農地の繁栄を願って大事に保管する習慣がある。タイ政府は王室開耕祭の日を祝日として指定しており、出入国管理局や政府機関は閉鎖となる。