パタヤビーチの混雑したビーチフロント飲食エリアで2026年5月4日、自称ボクサーを名乗る外国人観光客の男が、大麻喫煙の注意に対する報復として、立ち去ろうとしたタイ人男性を背後から殴打する事件が起きた。アヌティン首相が外国人観光客の不適切行為に対する取締り強化を打ち出した直後のタイミングで、しかも現場には市職員が来たにもかかわらず逮捕には至らなかったことから、観光地の治安と法執行の実効性の両面で批判が広がっている。
被害者はキッティポン・サ・アードチャンディーさん(29)。親族とビーチサイドで食事中、近くで大麻を喫煙するグループに対し、公共の場での喫煙をやめてほしいと冷静に伝えに行ったところで暴行を受けた。喫煙していた男の交際相手とみられるタイ人女性が一度仲裁を試み、キッティポンさんもその場を離れる動きを見せた直後の出来事だった。
複数の飲食客が一連の暴力を目撃している。キッティポンさんは取材に対し、同じ男が別のタイ人客にも同様に注意された際に類似の暴行を働いたと証言した。男は現場で下品なジェスチャーを繰り返し、周囲を挑発し続けたという。
通報を受けた市職員は迅速に駆けつけ、両者を引き離した上でそれぞれ現場から退散するよう指示した。加害者の男には宿泊先への帰還が命じられたが、即時の逮捕や正式な容疑の発表は行われていない。観光地パタヤでは外国人による暴力事案でも被害が軽微と判断されると現場処理で済まされやすい運用が続いており、今回もその例に当てはまる。
事件はアヌティン首相が観光客の不品行に厳格対応を指示した命令の直後に表面化した形で、現場の警察運用との間に大きなギャップがあることが浮かび上がった。首相の指示では即時国外退去とブラックリスト入りを標準対応とする方針が示されたばかりだが、暴行を行った当事者がその場で帰宅を許される運用が続けば、観光地の安全担保にはほど遠い。
タイの大麻は2022年に医療目的での合法化が大きく進んだ後、観光地での公然喫煙やレクリエーション利用が問題視されるようになり、2024年以降に再規制の議論が続いている。今回のように吸う側が逆ギレし、注意したタイ人を殴る構図は、医療目的で解禁したはずの制度が観光客の娯楽利用と暴力リスクを生み出す現状を改めて示した。
在タイ日本人や旅行者にとっては、ビーチや屋外で漂う大麻の煙に直面したときに、相手に直接注意を行うリスクが小さくないと見ておく方が安全だ。記録動画を確保した上で観光警察1155番か地元警察に通報し、現場では距離を取る方が損害を回避できる。