スコータイ県在住の57歳男性ピパット氏は妻とともに、2011年から15年間にわたって野良犬と野良猫を自宅に引き取り、世話をしてきた。累計では犬38匹・猫64匹を引き取り、老衰や病気で亡くなった子も多いが、2026年4月の取材時点で犬18匹・猫15匹の計33匹が暮らしている。
住居は40年以上前に建てられた木造の一軒家で、床柱は傾き崩壊の危険水準にある。タイ地方自治体の住宅基準では「修繕または解体が必要」とされる状態だが、二人はここで犬猫と雑魚寝を続けている。夫妻は低収入の日雇い労働者で、月収は多い月でも数千バーツ程度。自分たちの食費を削って動物たちに餌を与えているという。
ピパット氏は取材に「人間は我慢できる。犬や猫のあの目を見ると、腹が減っていても放っておけない」と語った。地元のボランティア団体や動物愛護グループはこの話をSNSで拡散し、支援の輪が広がっている。クラウドファンディングには数日以内に数十万バーツの寄付が集まり、建物の補修工事と動物たちの獣医費用に充てられる予定だ。
タイでは推定350万頭以上の野良犬が街に生息しているとされ(農業省畜産局2023年推計)、都市部・農村部を問わず社会問題となっている。野良犬・野良猫への対処は地方自治体によって異なり、殺処分・不妊手術・シェルター収容のいずれかの方針を取っている。民間レベルでの引き取りには法的制限がなく、こうした個人の善意に頼る部分が大きい。
動物愛護法(2023年改正)によって動物虐待への罰則は強化されたが、野良動物の管理責任は依然として曖昧な部分が残る。タイ政府は2025〜2030年の「野良動物管理計画」で不妊・去勢手術の普及を目標に掲げているが、予算・人員ともに不十分という批判も多い。ピパット夫妻のような市民の行動が注目されるたびに、制度的支援の充実を求める声が高まる。