ナラティワート県選出の下院議員カモンサック・リーワーモー氏(51歳)の車が2026年3月20日、自宅前で銃撃された。現場から逃走に使われた白いトヨタ・ハイラックスが軍の車両として登録されていたことが判明し、海軍関係者の関与が捜査線上に浮かんだ。
事件の概要
銃撃は3月20日、ナラティワート県バーチョー郡の議員宅前で発生した。M16ライフルによる銃撃で、車を運転していた運転手のウチャラム・コーラー氏と警護の警察官ハリラック・ヒームミハナー氏が重傷を負った。カモンサック議員本人は乗車しておらず無事だった。
目撃情報と防犯カメラ映像から、犯人グループはプラチャーチャット党に所属するカモンサック議員の自宅付近を待ち伏せしていたとみられる。
軍用車両の使用
事件後の捜査で、逃走に使われた車両が国家安全保障運営本部(กอ.รมน.)所属の車両として登録されていたことが判明した。これを受けて捜査機関は、事件に軍関係者が関与している可能性を調査し始めた。
最初に逮捕されたのはアーリーチー・アブー容疑者(24歳)、元海軍士官のソムポーン・リムラー容疑者(57歳)ら3人。このうちソムポーン容疑者の元海軍士官という経歴から、組織的な関与の疑いが強まった。
追加捜査と「大尉」への聴取
続報によれば、捜査当局は2人の「一等兵曹」(เรือเอก)と元武装兵(อดีตทหารพราน)もさらに追っていた。なぜ軍の車両が使われたのかについて、「ナ・オー(大尉)」と呼ばれる人物が別の者に車を貸したとされており、この人物への聴取も進められた。
逃走に使われた軍用ピックアップが後に発見され、すでに解体・破壊されていた。証拠隠滅が疑われる行為で、事件の組織性を示す状況証拠となった。
南部での政治的暴力の背景
ナラティワートはタイ深南部(パタニー3県)の一つで、マレー系イスラム教徒が多数を占める。1990年代から断続的に分離独立派による暴力事件が続いており、政治家や警察・軍への攻撃も過去に複数発生している。
ただし今回の事件がこうした分離独立運動と関係があるかどうかは捜査段階では不明だった。軍の車両を使った点や、逮捕された容疑者の軍歴から、別の動機や勢力の関与が疑われていた。
政治的影響
カモンサック議員はプラチャーチャット党(旧軍系政党)の所属だ。南部では異なる政治勢力間の対立や、地域利権をめぐる暗闘が背景にある事件が起きることがある。議員本人は無傷だったが、警護の警察官が重傷を負ったことで組織的な計画的犯行の疑いが強まっている。
捜査の行方と、軍関係者の組織的関与の有無が今後の焦点となった。