4月4日朝7時、ナコンラーチャシーマー県クルブリー郡の住民から地元自治体に「聖蛇が職場に入った」との通報が入った。駆けつけた防災担当者が見たのは、1リットルのペットボトルほどの太さの巨大な蛇だった。
体長約4.5メートル。キャッサバ加工場のオフィスの床に潜んでいたのは、世界最大の毒蛇として知られるキングコブラである。通報を受けたチョラケーヒン準区のオラヤー区長がただちに防災チームを率いて現場に向かい、専用の器具を使って捕獲に成功した。蛇はその後、自然に返された。
興味深いのは、住民がこの蛇を「キングコブラ」とは呼ばず、「聖蛇」として通報した点だ。オラヤー区長によれば、住民はこの蛇がキングコブラであることを分かっていた。しかしタイの古い言い伝えでは、猛毒を持つ蛇が家や職場に入ってきた場合、敬意を込めて「聖蛇」と呼ばなければならないとされている。毒蛇を本来の名前で呼ぶと不吉なことが起きるという信仰が、今もタイの農村部には根強く残っている。
ナコンラーチャシーマー県はタイ東北部の内陸県で、周辺にはカオヤイ国立公園をはじめ豊かな森林が広がる。キングコブラの生息域と人の生活圏が近接しており、住宅やオフィスへの侵入は珍しくない。同県では今年3月にもワンナムキアオ郡で4メートル級のキングコブラ2匹が民家で発見されている。
日本では考えられない光景だが、タイでは蛇の侵入は日常の一部である。特に暑季は蛇が涼しい場所を求めて建物に入り込むことが増える。今回は負傷者が出なかったが、キングコブラの毒は致死量に達し得るため、噛まれれば数時間で命に関わる。タイ在住者や旅行者は建物に入る際に足元を確認する習慣をつけておきたい。