バンコクのペッカセーム署管轄で、豚肉を盗んだカップルを警察がボートで追跡するという異例の逮捕劇が繰り広げられた。夫は手製の拳銃を警察に向けて威嚇し、水路をボートで逃走。妻だけが取り残されて逮捕された。
4月3日、ペッカセーム署の捜査チームがバンボン裁判所の逮捕状に基づき、37歳の女性「トゥクター」ことネーン容疑者を逮捕した。容疑は「銃と弾薬の不法所持、公共の場での銃の携帯、窃盗」の3件。押収されたのはタイ製の手製拳銃1丁と実弾だった。
豚肉を繰り返し盗んでいたカップル
事件の発端は豚肉の窃盗だ。カップルは市場や食料品店から豚肉を繰り返し盗んでおり、手口が組織的になっていたことから警察が逮捕状を請求する事態にまで発展した。
逮捕に向かった警察は、カップルが水路沿いの水上コミュニティに潜伏していることを突き止め、ボートで現場に接近した。首謀者のペッカセーム署長率いる捜査チームが出動し、署長自らが現場に同行する異例の態勢が組まれた。
ところが夫は警察が近づいたとき、隠し持っていた手製拳銃を取り出し、警察に銃口を向けて威嚇。混乱のなか水路をボートで逃走することに成功した。妻のネーン容疑者は逃げ遅れ、その場で拘束された。
「妻を置いて逃げた」が話題に
夫が妻を残して逃走したことが、タイのSNSで話題を呼んだ。「豚肉泥棒から銃撃、ボートチェイス、そして妻を見捨てて逃げた」という一連の展開が、SNSでは映画のようだと評された。
逮捕されたネーン容疑者は取り調べで事件への関与を認めた。しかし夫については「現在も逃走中」で、警察が追跡を続けている。手製拳銃を警察に向けた行為は重大な加重犯罪に該当し、夫には窃盗に加えて銃刀法違反も適用される見通しだ。
タイにおける手製銃の問題
タイでは手製拳銃(タイ語でปืนไทยประดิษฐ์)の不法所持が長年の問題となっている。農村部や低所得層が多く住む地区では、安価で製造できる手製銃が密かに流通しており、こうした事件に使用されるケースが後を絶たない。
タイ警察庁のデータによると、年間数千丁規模の手製銃が摘発されており、製造・所持・使用は重罪に問われる。外国人も携帯していた場合は国外退去となる場合がある。在タイ邦人の場合も銃に関する規制は日本より厳しく解釈される部分があるため注意が必要だ。
今回の事件では、手製拳銃を水路での逃走に持ち込んだことで夫の刑事責任はさらに重くなる見込みだ。ネーン容疑者については、連行後にペッカセーム署でさらなる取り調べが行われ、共犯関係や窃盗の全容を解明する捜査が続けられている。