ディーゼル価格がリッター47バーツを超える燃料危機のなか、配車アプリ大手のGrab Thailandがドライバー向けにEVの「レンタル」と「分割払い」の2つのプランを導入した。燃料費に苦しむドライバーのEV移行を支援する狙いだ。
Grabが公表したデータによると、タイ国内でGrabのプラットフォームを利用するドライバーのうち、すでに3万台以上がEVに切り替えている。この数字は1年前と比べ3倍以上の伸びとされ、燃料高が図らずもEVシフトを加速させる形になっている。バンコクでは燃料代が実質ゼロになることから、月間コストが大幅に改善するという報告も出ている。
新たに導入された「Drive-to-Own(乗って所有する)」方式では、日額ベースの分割払いでEVを購入できる。売上の一部を毎日自動的に返済に充てる仕組みで、まとまった頭金を用意できないドライバーでも参加しやすい。「レンタル」方式は月額での車両借り上げで、所有リスクを取らずに電動化できるオプションだ。タイのEV車両はBYD、NETA、MG、Orianなど中国・欧州ブランドが主流で、1台70〜100万バーツ程度が相場だ。
Grabのデータでは、EV車両のドライバーは燃料費が実質ゼロになる分、月間コストが大幅に下がるという。ガソリン代が月5,000〜8,000バーツかかっていたドライバーが、充電費に置き換えると1,500〜2,500バーツ程度に圧縮できる計算だ。ディーゼルや高オクタン価ガソリンが高騰する現在、その差はさらに広がっている。
タイ政府も電気自動車普及を後押しするため、2022年から輸入EV関税の引き下げや国内組立奨励策(3.5.30政策)を実施している。充電インフラの整備もバンコク首都圏を中心に進んでおり、コンドミニアムや商業施設への設置が義務化される方向で議論が進む。
一方で課題もある。地方では充電ステーションが少なく、長距離運転を主とするドライバーにとってEVはまだ選択しにくい。また、EV車両の初期費用は内燃機関車より高いため、分割払いとはいえ月々の返済が大きな負担になるドライバーも出てくる。Grabが今回導入したファイナンス支援の詳細条件が、実際のドライバーにとって利用しやすいものかどうかが普及の鍵を握る。
タイ全体の配車アプリ市場では、Grab以外にもBoltやInDriveが競合しており、EVシフトへの対応が競争軸の一つになりつつある。燃料危機が続く限り、EVへの移行プレッシャーはさらに強まると見られている。
環境面では、EV普及により都市部の大気汚染が緩和されることも期待される。バンコクの交通渋滞による排気ガス問題は長年の課題であり、配車アプリのEV移行が都市環境改善の一助となりうる。
環境面では、EV普及により都市部の大気汚染が緩和されることも期待される。バンコクの交通渋滞による排気ガス問題は長年の課題であり、配車アプリのEV移行が都市環境改善の一助となりうる。タイは2030年に電気自動車の国内生産30%達成を目標に掲げており、製造業のEVシフトも含めた包括的な産業転換が進んでいる。
在タイ日本人や日本からの訪問者にとっても、今回のような出来事はタイの社会・文化の一側面を理解するうえで参考になる。タイと日本の間には歴史的・経済的な深い結びつきがあり、在タイ日系企業のビジネス活動や日本人観光客への影響も無視できない。今後も継続的な情報収集と現地状況の把握が重要だ。
タイは人口約7,000万人を擁する大国で、バンコクを中心に経済・文化・政治が集中している。2026年現在、首相アヌティン・チャーンウィーラクーン率いる連立政権は、中東情勢の影響で高まるエネルギーコストと生活費上昇への対応を最優先課題としている。在タイ日本人・日本企業にとっても、タイの政策動向や社会情勢を把握し、適切に対応することが求められる局面だ。